司法を身近に感じる…裁判員裁判終えて一裁判員

update 2010/2/21 19:10

 函館地裁で初めての裁判員裁判が終了した。16日から4日間の審理に参加した裁判員経験者の1人が20日、函館新聞の取材に応じ、「裁判を身近に感じるためにも制度には意義があると思う」と話した。この裁判員の経験談を交え、公判を振り返る。

 裁判員裁判では、従来の裁判と比べ、検察、弁護側ともに平易な言葉遣いや視覚に訴える資料を駆使した丁寧な立証を展開した。性犯罪事件の性質上、立証過程で被害者のプライバシー保護は徹底され、法廷内の大型モニターは使用せず、裁判員らの前にある小型モニターのみを使用。供述調書の朗読も具体的な犯行状況にかかわる部分は省かれ、裁判員らに黙読させる場面もあった。

 裁判員は公判中、一部の専門用語を除けば、検察官、弁護人の話す内容や審理の進行に対する理解はしやすかったとする。一方で「殺人事件の遺体写真を見せられたわけではないが、犯行状況を伝える証拠の中には生々しいものもあった。被害者のつらさを考えた」と、精神的な負担を明かした。

 裁判員同士は互いに氏名や素性を明かさずに4日間を過ごした。「緊張はあったが、同じ裁判員に選ばれたという共感から、ぎくしゃくした様子はなかった」とする。裁判長らが積極的に裁判員の発言を促したといい、「裁判所の雰囲気づくりも良かった。意見を押しつける感じはなく、思ったことを発言できた」と話す。

 裁判員、補充裁判員には裁判員法で守秘義務が課せられる。裁判員を務めた感想や法廷内でのやりとりを除き、評議の過程や結論、被害者のプライバシーなどを生涯にわたって他人に漏らすことができない。「被害者名などはあえて覚えないようにした。事件内容の影響もあるが、今回の裁判員全員が守秘義務を守ることができると思う。身内にも話さない」と話した。

 今回、裁判員を務めた4日間は仕事を休んだ。「3件の事件があったことを考えると日程は仕方ない。生活への影響を考えると参加できるぎりぎりの長さ」とする。選ばれた裁判員は一定期間、拘束される上、いや応なしに判決を下すという責任を背負うことになる。「懲役18年という判決もあるが、想像以上に重い内容の事件だった。量刑を決めるだけの事件でも相当負担があったが、有罪か無罪かを決める事件であれば、裁判員はもっと大変だろう」と話すが、制度への参加は意義深いものになったとする。

 国民の司法参加を看板に掲げた裁判員制度施行から9カ月がたち、ようやく函館でも1号事件が終了した。対象となる事件が少ないことは治安の観点から良いことだが、市民の間に制度への理解が浸透するまでには、事例の積み重ねが必要だ。

提供 - 函館新聞社




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