回顧1・火災現場へ昼夜駆けつけ

update 2009/12/22 13:20

 今年も昼夜を問わず多くの火災現場に駆けつけた。弥生町の民家火災や函館どつく、湯川の温泉旅館など、大規模な火災が何件かあり、紙面に現場写真が掲載される機会も多かったように思える。現場を自分の目で確認すれば、事後に警察や消防で取材する際に状況を把握しやすくなるが、本音を正直に言えば「行きたくない」。時に悲しい場面を目にすることもあり、炎や黒煙を上げる建物を目の前にすると、足がすくむような恐怖を感じるからだ。

 1月7日、函館市民を震撼(しんかん)させた連続放火事件が発生した。午前3時半すぎの中道での車両とマンション火災を皮切りに、約3時間にわたり、本町の飲食店ビル、若松町など次々と火の手が上がる現場を追い掛けた。

 昨年末から市内では火災が相次いでいたが、この日だけは不自然さから放火を疑ってはいた。しかし、一段落した午前6時半ごろ、空が明るくなったこともあり「さすがに今日はもう終わり」と決めつけて、現場を離れた。この直後に警察と放火を実行した男との“大捕物”が始まるとは予想もせず、記者としての嗅覚(きゅうかく)のなさを自覚した。

 後に、放火罪などで起訴された男の公判で明らかとなった動機を要約すると、酒に酔った末、むしゃくしゃした気持ちを晴らすために次々と火をつけたというもの。大それた犯行には釣り合わない内容と思えた。公判中、怒りの声を漏らす傍聴者もいた。

 7月に大阪府内で5人が死亡する放火殺人事件があったが、可燃性の強いガソリンをまいて火をつけた手口が共通している。男は「少量だから大丈夫だと思った」などと供述したが、数十人が建物内にいた本町のビルや多くの住人が就寝中だった中道のマンションなど、「もし函館でも死者が出ていたら…」と、今考えても背筋が凍る。

 事件性はなくとも、12月に入ってからも、死傷者が出る住宅火災が相次ぎ、市内では20日現在、6人が命を落としている。消防本部で話を聞くと、放火を除けば、鍋を空だきしたり、暖房器具やたばこの火の不始末など、出火原因の大半が「うっかり型」。結果論だが、防ぐことのできる火災が多く、住宅用火災警報器があれば、逃げ遅れずに助かる見込みが高いケースもあるという話は何度も聞き、幾度となく記事にしてきた。

 取材活動を通じて、交通事故と火災だけは、決して人ごとではなく、いつ自分の身にも降りかかるかわからないとの思いは強い。その思いを記事に込めることは難しいのだが、せめて来年は平穏な1年であることを願いたい。



 この1年、本紙では、道南の各市町で起きたニュースや話題などをさまざまな切り口で伝えてきた。現場の担当記者が抱いた取材時の思いや体験を基に、残りわずかとなった2009年を振り返る。

提供 - 函館新聞社




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