愛する古里盛り上げたい…元町茶寮の成田和子さん

update 2009/12/17 15:37

 【函館】函館市元町の喫茶店「元町茶寮」の店主、成田隆雄さん(享年59)が8月9日、がんのため死去した。35年余りのサラリーマン生活を終え、愛する古里・函館でようやく第2の人生を踏み出した矢先だった。店を拠点に街を盛り上げたいと願い、最期まで生きる意欲を失わずに病と闘い続けた夫の遺志を継ぎ、妻の和子さんは「店には彼の夢と希望が詰まっている。この場所を残すのが私の仕事」と話している。

 隆男さんは1950年、函館市で生まれた。西高卒業後、大学進学のため上京。学生運動にのめり込み、20代から大手薬品会社の営業マンとして働き始めた。和子さんとは営業先の帯広で出会い、87年に結婚して1女をもうけた。

 口癖は「最終的には函館に住もう」だった。仕事の都合で札幌や東京などに転勤したが、元町の土地を手に入れた90年には家を喫茶店に改装して家族を住まわせ、単身先と函館を往復し続けた。「とにかく函館が大好きな人でした」と和子さんは振り返る。

 店には隆雄さんのこだわりが詰め込まれている。「西部地区に溶け込む外観を」との要望で壁は温かみのあるしっくい、床やいすは良質な木材を使用。観光客向けのカメラフィルムを売ったが、「景観を壊す」と店先ののぼりも反対した。一方、和子さんは食器や食材を厳選し、季節感あるメニューを考案。子育ての傍ら店の経営に明け暮れた。

 98年から8年間は店を人に貸し、家族で転勤先の仙台に住んだが、定年前の2007年に隆雄さんが退職。コーヒーの焙煎技術を学び、店をリニューアルオープンさせて夫婦2人での経営を始めた。

 しかし08年2月、隆雄さんのすい臓がんが発覚。余命7、8か月と診断された。抗がん治療を始めたが、肝臓に転移し、入退院を繰り返した。闘病生活をしながら店を手伝っていたが、地元の病院に入院中の8月、息を引き取った。

 長年薬学畑を歩んだ隆雄さんは最新療法を調べ、積極的に試しては生きる道を模索した。「1年でも生き延びれば新しい治療法ができる、と常に前向きで弱音は吐きませんでした」と和子さん。医学だけでなく政治や経済、文学、音楽など幅広く知識があり、西高同期に当たる作家の故佐藤泰志の小説映画化にも強い興味を抱いていた。「お金やブランドとは違う価値観を持っていた」という。

 愛する夫の死から立ち直れず、和子さんは一度は店を閉めようと思ったが、20歳の長女に「お父さんの大好きな函館の店を手放したら絶対駄目」と言われて思い直した。「人と真っ直ぐ向き合うすてきな人だった。彼の遺した元町茶寮を続けたい」と話している。店は火曜定休。午前10時―午後6時。問い合わせは TEL0138・23・5350。

提供 - 函館新聞社




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