最高幹部の対立表面化…インサイド 工藤副市長辞任表明

update 2009/11/26 15:58

 函館市の工藤寿樹副市長(60)が任期を3カ月残して12月末での辞職を表明したことで、かねてからささやかれてきた市役所最高幹部の不協和音や対立が表面化した。1期目の任期総仕上げとなる西尾正範市長の来年度予算編成に影響が出るのはもちろん、後任の副市長人事も難航が予想される。約1年5カ月後の次期市長選を前に、西尾市長が求心力をどう維持し、市政の懸案に対応していくかが問われる。

 「西尾市長とは市政運営に対する方針、理念が違う―」。工藤氏の発言を聞いたある市幹部は「冷静ではいられない。ああいう発言が出るのはショックだ」とこぼした。

 工藤氏は2006年に助役(当時)に就任。その翌年の西尾市長就任で一度は辞職願を提出したが、西尾市長の強い慰留があり、続投した。しかし、自らの発想をすぐ発言し実行に移す西尾市長と、慎重に物事を進めようとする工藤氏とでは衝突は避けられなかったとの声がある。複数の市議は「ともに将来の市長候補と目された2人で、タイプも違うし、一体感はなかった。不協和音が出ても不思議ではない」と語る。

 工藤氏は函館国際貿易センターの不正経理問題やケアホーム利用者の認定ミス、特別職「理事」新設をはじめとする幹部人事など諸問題への対応で西尾市長への不信感を強め、取材に対し「辞職を決断したのは8月末ごろ」と話す。別の市議は「工藤氏は人事案件に介入させてもらえず、信用されていないと感じたのでは」と語る。

 工藤氏の辞任表明を受け、西尾市長は新たな副市長の人選に着手し始めている。人材不足との指摘も挙がる中、庁内外からは西尾市長の信任が厚い小柏忠久理事(62)を推す声も多い。

 ただ、理事は行革担当の特別職として、議会の根強い反対がある中で昨年4月に4年間の時限付きで設けた役職。小柏氏は任期を2年以上残しており、仮に同氏を副市長に登用する場合、理事職設置との整合性を問う議論の噴出は避けられない。「小柏氏だから理事が務まっている面もある」(市議や市OBなど)とする声も聞こえる。

 今回の事態を受け、2011年の次期市長選に向けた動きがにわかに熱を帯び始めることは想像に難くない。工藤氏は「先のことは何も考えていない」と言及を避けているが、いずれは出ざるを得なくなるのではとの声もある。

 かつて井上博司前市長の市政運営を批判して助役を辞し、今度は工藤氏から離反されることになった西尾市長は「それはそれで一つの道だと思う」と慰留しなかった。政策論争よりも不祥事をめぐる紛糾が多い西尾市政。残り1年余りの任期をいかに全うし、山積する諸問題に立ち向かっていくのか。西尾市長の政治手腕が改めて求められる。

提供 - 函館新聞社




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