知的クラスター事業「廃止」/怒り、撤回の声強まる

update 2009/11/23 13:30

 政府の行政刷新会議が来年度予算の事業仕分けで、産学官連携による技術や産業開発を支援する文部科学省所管の知的クラスター創成事業を「廃止」と判定したことに対し、地元関係者の反発と予算確保を願う声が強まっている。事業推進に対し、5カ年で計15億円の補助金交付が打ち切られるだけでなく、不況と人口減の中でまちづくりの起爆剤として国際水産・海洋都市構想を掲げる函館市などからは「はしごを外された」と、民主党政権へ矛先を向けている。



 同創成事業は、国際競争力を持った新産業の創出に取り組む地域を支援するもので、公募によって支援地域を選出する。

 函館市と道は「函館マリンバイオクラスター」と銘打ち、海洋環境の計測、予測技術の確立、沿岸の海洋資源などを活用した食品や医薬品の開発など、4項目を研究テーマに掲げて提案。文部科学省は今年7月、同事業の「グローバル拠点育成型」に採択した。各研究テーマは北大大学院水産科学研究院や道立工業技術センターの研究者がグループリーダーを務め、これに公立はこだて未来大や函館高専など23の研究機関、50の企業が参画している。

 函館エリアは2003―05年に都市エリア産学官連携促進事業の一般型、06―08年度は同事業の発展型の採択を受けている。同発展型ではガゴメ(トロロコンブの仲間)などを使った113の製品を開発し、「函館ガゴメ」のブランド作りにも役割を果たしてきた経緯もある。

 しかし、事業仕分けでは「このレベルの事業規模では成果が生まれない」「地方大学救済のためなら別途、予算を要求すべき」と“一刀両断”。同事業を含む産学官連携関連は廃止と判定された。

 函館市の西尾正範市長は廃止判定を受け、地元選出の国会議員への要請などを精力的に行ったほか、19日に開かれた民主党国会議員との政策懇談会では、同じく対象地域の上田文雄札幌市長、砂川敏文帯広市長らと歩調を合わせ、予算確保を訴えた。

 「水産・海洋都市構想はもともと、1994年ごろの北大水産学部移転問題が発端で、15年かかってここまで到達してきた。これを再び立て直すには5―10年を要する。廃止判定は地方主権を目指す民主党の思想から考えてもおかしいと言わざるを得ない」と憤る。

 本年度交付された3億円は、研究員の人件費や必要機器の購入、調査旅費などに充てられている。同事業の中核機関・函館地域産業振興財団も「成果を上げており、決して“税金のムダ遣い”ではない」と声を荒げる。事業統括の三浦汀介副理事長は「資源のない日本は技術や研究シーズ(種)で世界と戦っていかなくてはならないのに、将来のフレームが見えない中で予算が少ないから削るというのはどうか」と疑義を呈する。

 20日には高橋はるみ知事ら関係する7道府県の知事が予算確保を求める緊急声明を発し、「廃止撤回」を求める動きは加速している。三浦副理事長は「産学官の調和は地域発展の要。上手にやることが地方のまちづくりにもつながるということを(政府には)見てほしい」と話す。

提供 - 函館新聞社




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