「文字書き人形制作佳境」 道南唯一のからくり人形師の平塚さん
update 2009/10/28 12:00
道内唯一のからくり人形師、平塚英昭さん(66)=函館在住=が、幕末に活躍した天才からくり師、田中久重(1799― 1881年)の最高傑作とされる「文字書き人形」の制作に挑んでいる。からくり人形に魅せられて36年。先人の仕掛けを忠実に再現しようと試行錯誤を重ねる平塚さんの思いは「江戸のからくり技術のすごさを広めたい」。5年掛かりの作業は佳境に入り、年内の完成を目指している。
平塚さんがからくり人形を作り始めたのは30歳のころ。テレビで見た「茶運び人形」に興味がわき、独学で挑戦した。以来、からくり文化のとりこになり、人形を作り続ける傍ら、尾張地方などに残るからくり人形が乗る山車祭りにも多く通った。
大手広告代理店を定年後の2004年7月、函館市中道1にギャラリー「街角美術 からくり人形館」をオープンさせた。江戸時代の人形を復元した作品約50体を展示しながら、より難度の高い人形作りに取り組み続けている。
「文字書き人形」はゼンマイを動力とし、筆を自在に動かして「寿」などの文字を書く。首や腕が動いたり、顔や服が変化したりする多彩なからくりの世界の中でも、繊細で高度な仕掛けが施された珍しい逸品だ。平塚さんは04年ごろ、修復された田中久重の人形をテレビで見たのを機に制作に取り掛かった。
図面はないため、知恵と経験、想像力を働かせて工夫を重ねる。難しいのは腕の左右、前後、上下の動きを作り出す3枚の「カム」部分の制作。文字の絶妙な形を表現するため、その作業に丸3年費やしている。
「現代人が考えつかないことを江戸の人が成し遂げたことに驚かされる。人形作りに飽きることはない」と平塚さん。文字書き人形のほかにも、田中久重の名品「弓曳童子」や車上の仙人が常に南を指す「唐子指南車」などの制作も進めている。
電力など最新技術を使わず、昔ながらの製法や材料を大切にするのは「幕末の人のすごさを説明したいから」。素朴で味わいあるからくり人形の魅力を、1人でも多くの人に伝えたいと願っている。
からくり人形館は入館自由。不定休。問い合わせはTEL0138-54-1817。
提供 - 函館新聞社
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