石川稜北地区問題、既存商店街の崩壊懸念 市はまちづくりのビジョンを

update 2009/10/17 15:35

 函館商工会議所などが石川稜北地区の市街化区域編入に反対する要望を取り下げたことで、同地区に600区画を造成する民間の区画整理事業が事実上動き出す。併せて、函館新道沿いに新たな大型店舗の進出が見込まれ、会議所部会の全会一致とはいえ、既存商店街の崩壊や地盤沈下を懸念する声はやまない。まちづくりはもちろん、商業全体の振興や大型店対策について、市は明確なビジョンを示す必要がある。

 商工会議所関係者は今回の取り下げが苦渋の決断だったことを明かす。松本栄一副会頭は修正案について「100%ではない」と幾度となく口にし、古川雅章専務理事もまた「道の都市計画審議会が迫る中で、ギリギリの判断だった」と話す。

 市議会で郊外型の大型商業施設の立地問題を長く取り上げ、今回の問題でも市の対応を追及した志賀谷隆氏(公明党)は「商工会議所が決めたことなので是としなければならないが、個人的にはこれで都市のスプロール(無秩序な拡大)現象や空洞化に歯止めがかからなくなると思う。5000平方メートル以下の商業施設なら認めると言っても、実は相当な大きさ」と語る。

 食品スーパーに限ってみると、2007年6月にオープンしたスーパーアークス港町店は延べ床面積が約3300平方メートル、08年7月のフレスポ戸倉内のアークス戸倉店は同約2200平方メートル、同年11月に開店したコープさっぽろひとみ店は同約2100平方メートルだ。志賀谷氏は「これに他の物販やアミューズメント(娯楽)施設などが立ち並べば、中心市街地はひとたまりもない」と懸念。市職員やOBからも「床面積を縮小するだけで、問題の根本が解決されるわけではない」とする声が聞かれる。

 市内の流通関係者は、函館市のまちづくりや商業政策について「市内に入る幹線道路の“関所”に商業施設を造るという失態を続けている」と指摘する。国道228号は北斗市ではあるが七重浜の商業施設、道道函館南茅部線にフレスポ戸倉、国道5号函館新道に現在の「石川問題」となる商業施設が立ち並ぶことになる。関係者は「市や議会が一体になれば函館新道や戸倉の開発は防ぐことができた。そして今回、また同じことを繰り返している。市が棒二森屋や丸井今井、地元スーパーを守ろうといくら言っても、やっていることが逆だ。大型店の撤退問題が再び起きるだろう」と語る。

 人口問題研究所は、約20年後の函館市の人口を20万人と推計している。市議会で同問題を取り上げた福島恭二氏(民主・市民ネット)は「将来に禍根を残さないよう、石川の市街地拡大には反対してきた。これで石川地区に小学校を作る動きも出てくるだろう。少子化で学校の統廃合を進めている中、教育政策でも逆行する」と別な観点からも問題点を指摘する。

提供 - 函館新聞社




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