【煙のゆくえ・5】おいしい料理、空気も提供…市内飲食店でも禁煙増加
update 2010/8/3 10:45
料理へのこだわりや健康への配慮などから完全禁煙を選ぶ飲食店が増えている。市立函館保健所は2003年から「おいしい空気の施設」として登録して、ホームページ上で公開している。近年は登録が伸び悩んでいたが、厚生労働省が分煙に関する通知を出した2月以降は順調に増え、7月15日現在で約300施設となった。
手打ちと無添加の食材にこだわるそば店・起進堂(函館市深堀町)は、店を新築した2000年から全面禁煙にした。「新しい店をヤニで汚くしたくなかった」と語るのは店主の小川進越さん(56)。吸えないことに怒り店を出て行く客もいるが、たばこを嫌う新しいお客さんが増えた。八雲町から毎週のように訪れる山野井匡子さん(40)は「体に悪いたばこの煙はどうしても気になる。このような店の存在はありがたい」と話す。小川さんは「禁煙は(店が)選ばれる理由になる」と確信する。
「料理やワインの香りを大切にするならたばこは厳禁です」。イタリア料理店「アンティカ・オステリア・デル・アルバ」(同市本通)のオーナーシェフ・奈良嘉克さん(38)は力を込める。テーブル席をすべて禁煙とした直後には、9割を占めていた女性を中心に客離れが進み、売り上げが25%もダウンしたことも。
「あの時は大打撃だった。禁煙に踏み切れない店の気持ちは痛いほどわかる」と語る奈良さん。たばこの煙が充満する以前の店に後戻りするつもりはない。禁煙による売り上げの減少分は、高級テリーヌやフォアグラプリンなどの販売で取り戻し、煙のない新たな店作りに挑んでいる。
客離れの不安から禁煙化をためらう飲食店が多い中で「おいしい空気の施設」には、たばことは切っても切れない酒場≠燒シを連ねる。昨年9月に店内禁煙に踏み切った同市杉並町の「BAR NEW YORK NEW YORK(バー・ニューヨーク・ニューヨーク)」のカウンターには「禁煙席」のプレートが光る。
ずらりと棚に並ぶ、シングルモルトウイスキーを指さす、店主の辻義晴さん(61)は「ウイスキーの楽しみは半分が香りです。たばこを止めたらもっと味わいを楽しむことができるようになりました」と振り返る。禁煙で減るかと思われた客足は逆に伸び、売り上げもアップしているという。
かつて愛煙家だった辻さん。病気に苦しむ友人と接して健康の大切さに目覚めた。独りで始めた禁煙だったが、客がくゆらす煙が気になり始めた。完全にたばこと手を切ったころには「変な臭いだ」と感じるように。禁煙成功の体験者でもある辻さんは「この業界に禁煙が広がれば店の居心地はもっと良くなる」との思いを強くする
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喫煙に対する包囲網≠ヘ道南でも確実に狭まっている。新たな法改正も検討される中、愛煙家の立場を尊重しながらも、他人に煙を吸わせない環境の整備が急務だ。家庭は、職場は、公園は―わたしたちの身の回りで、禁煙や分煙の取り組みをどのように進めるべきなのか。たばこの煙は有害という現実を正しく見つめ、冷静に考える時がきている。
提供 - 函館新聞社
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