【煙のゆくえ・3】道南自治体、対応分かれる 函館の現状に疑問の声

update 2010/8/1 10:58

 函館市の場合―。市役所各階にある分煙機には、勤務時間にも数人から10人ほどの職員が集まる。分煙機が吸い切れない煙は廊下や階段伝いに拡散。たばこを吸わない人は、「市役所はいつもたばこのにおいがする」(職員や来庁者)とまゆをひそめる。

 神奈川県が4月に受動喫煙防止条例を制定するなど、全国の自治体が動き始めたが、道南の反応は鈍い。各市町とも健康増進法施行後、体育館や保健関係の施設を禁煙としたが、市役所や町役場などの対応は分かれる。

 道南の2市16町で2月以降、庁舎内を禁煙化したのは知内と八雲の2町のみ。以前から禁煙の七飯と福島、乙部を含めても、庁舎内禁煙は5町にすぎない。こうした町では喫煙者に一定の配慮をする場合も多く、2009年4月から庁舎内を全面禁煙とした福島は屋外に灰皿を置き「環境が良くなったと評判はよい」。先行する町からは、対策が進まない都市部に批判的な声も。ある町の50代の男性職員は「函館はあらゆる面で道南の中心。本来なら他の市町をリードすべき」と語った。

 “分煙”の形を取る函館など2市11町の状況は一様でない。個室を設けるのは長万部と上ノ国、奥尻、今金の4町。ほかは「財政負担が大きく困難」とし、廊下などに分煙機を置く。煙が拡散する現状に森町は「実態は良くない。遅くないうちに廃止したい」とするが先は見えない。

 函館の分煙機のリース・購入料は2000―10年の11年間で6500万円にも上り、金がかかることに変わりはない。個室喫煙所を利用する同市内の女性(55)は「吸わない人のためには個室にすべき」と市の消極的な姿勢を疑問視し、庁舎内部からも「そろそろ完全禁煙にしてもいいのでは」の声が複数。だが西尾正範市長は「トップダウンで意見を押し付けるわけにはいかない。職員皆の意見を聞いたうえでどうすべきか決める」と慎重な構えだ。

 鹿部のように「分煙機をなくす方向だが、職員や議員の理解を得られない」と対応に苦慮するケースも。05年に3町が合併したせたなは「以前の状況が異なるので対応は容易でない」と、合併町ならではの悩みがある。

 自治体が全面禁煙を打ち出せない背景には「たばこ税」の存在もある。08年度の函館の税収は約22億円で、市税の6.5%を占める「安定した貴重な自主財源」(財務部)だ。以前は「たばこ購入は町内で」と書いたライターを配布した町も少なくない。

 一方、税収より健康被害がもたらす医療費負担の方が大きいとの指摘もある。喫煙で他人の健康を脅かすことが許される時代ではもうない。函館市で保健師を務めた斉藤佐知子市議(民生常任委員長)は「せめて吸わない人に害が及ばない完全個室にすべき」と、煮え切らない市の姿勢に苦言を呈する。

提供 - 函館新聞社




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