【煙のゆくえ・2】職場、家族がリスク管理を
update 2010/7/31 13:31
喫煙と嫌煙という双方の立場が妥協案としている分煙≠フ現状はどうか。厚生労働省が2002年にまとめた分煙をめぐる報告書は「ガス成分の除去は不十分」として喫煙場所の換気を求める。だが設備などを設けるには経済的負担が大きい。自治体や飲食店が「分煙をやりたくてもできない」と尻込みする理由だ。しかし、たばこを吸わない人にも健康へのリスクをもたらす受動喫煙をこのまま放置してよいのか。
たばこの害で最も深刻なのは、時に非喫煙者の数十倍にもなる喉頭がんや肺がんのリスクだ。数十年来の愛煙家である市立函館病院の木村純院長は「他人に危険を及ぼす権利はない。受動喫煙は絶対にいけない」と強く訴える。全国的にも病院や診療所の禁煙化が進み、地域がん診療連携拠点病院である同院も04年、敷地内を原則として全面禁煙とした。木村院長は「公共の場は原則禁煙が必要。誰がどのように分煙を進めるのかもっと明確にすべき」と語る。
「経済的負担から分煙が難しければ禁煙にすべき」と主張するのは、湯の川女性クリニック(函館市湯川町2)で、禁煙外来も担当する産婦人科医の小葉松洋子院長だ。「がんの3割はたばこが原因。たばこの煙は毒ガスだ」と力説する。喫煙者には「危険な煙を他人に吸わせるべきではない」とくぎを刺す。小葉松院長は、たばこの先端から生じる副流煙による最大の被害者は「喫煙者の家族」という。たばこが身近にある家庭では、喫煙の習慣が親から子に受け継がれる場合も。「吸わない人を守ってください。吸い始めないためには子どもの時からの教育が必要」と繰り返し訴える。
函館の女性の喫煙率は17.5%(06年度)と、全国平均10.0%に比べ格段に高い。函館中央病院には道南で唯一、胎児の発育不全や低体重などハイリスク出産を扱う「総合周産期母子医療センター」がある。木田毅センター長(小児科部門)は、多くの症例から「母親が喫煙者の場合、胎児が十分に発育せずに出産を迎える確率は高まる」とする。知能や精神発達への影響もあるといい、女児の場合は成長後に不妊の確率が高まることも。たばこの害は世代を超えて負の連鎖をもたらす。
胎児にとって妊娠の初期に当たる第10週(約2カ月半)までは、脳、心臓、肺といった器官が形作られる大切な時期だが、この期間に妊娠に気付かない女性も多い。木田センター長は「この時期の喫煙は奇形や発育不全などのリスクを高める。受動喫煙の恐れがある場所にも行かないほうがいい」とし、妊婦本人だけでなく職場や家族ぐるみでリスク管理する必要性を説く。
提供 - 函館新聞社
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