函館―新函館間経営分離問題、市は反対、札幌延伸への影響懸念

update 2010/5/19 11:48

 北海道新幹線が札幌まで延伸された場合、JR北海道が函館駅―新函館駅(仮称)間17.9キロを並行在来線として経営分離する方針を示している問題で、函館市の西尾正範市長は19日午後にJR北海道本社(札幌)を訪れ、JRによる同区間の経営継続を要請する。一方で、国が今夏にも新規着工区間の是非を決定することから、同区間の経営分離に反対している市の姿勢が札幌延伸の可否決定に影響することも懸念されるだけに、協議の内容が注目される。

 19日は西尾市長のほか、吉田崇仁市議会議長、森川基嗣函館商工会議所副会頭がJRを訪れ、同社の菅野光洋取締役と会談する。

 JR北海道は今年3月の国の整備新幹線問題検討会議で、中島尚俊社長が函館―小樽駅間を経営分離する考えを示し、今月12日の記者会見でも改めて表明。これに対し、函館市は現駅―新駅間を「新幹線の運行区間ではなく、並行在来線にはあたらない」と反発。新函館開業を踏まえてJRの運営のもとで、「都市間輸送のアクセス路線とすべき」との認識を示す。

 市の主張の背景にあるのは、94年11月に新幹線駅を現在の渡島大野駅とすることで道と合意した際、双方が交わした確約の存在。付随する覚書では「現駅への新幹線車両の乗り入れの方策や財源問題について、道が中心となって市など関係者と協議すると認識する」とあり、この文書を基に、道に新函館開業後のアクセス列車の充実などを求めてきた経緯がある。

 これに加え、現駅改築の際の周辺開発として、市が区画整理や国鉄清算事業団用地の購入など約110億円を投資してきたことも大きい。西尾市長は「また税金で駅舎を買い戻すことにはならない」と話す。

 庁内外からは、JRが札幌―小樽間を引き続き運営する方針を示したことに対し、「JRは採算の取れる路線だけをやろうとしている」との声も聞かれる一方、経営分離の区間が小樽までと長いことから「他の沿線自治体との連携を模索すべき」との意見も出ている。

 整備新幹線の新規着工は地元自治体が経営分離に同意することが条件となるだけに、市の姿勢は道南全体で進めてきた札幌延伸運動にも影を落とし始めている。17日の道新幹線建設促進道南地方期成会(会長・高野洋蔵函館商工会議所会頭)の総会では、前段に開かれた理事会で西尾市長が市の方針を説明したが、総会の場で説明するか否かをめぐり、予定時間を大幅にオーバーするなど難航した。

 市の渡辺宏身企画部長は「オール北海道での運動に水を差す環境は作りたくない」と、苦渋の判断であることを示しながらも「態度をはっきりと示す必要がある。JRには地域の事情を受け止めてもらわなくてはならない」とする。

提供 - 函館新聞社




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