道教大佐々木教授が『北海道の宗教と信仰』出版
update 2009/9/23 10:29
道教育大函館校の佐々木馨教授(63)=日本中世宗教史=が、13冊目の単著となる『北海道の宗教と信仰』を山川出版社から出版した。アイヌ民族と和人の宗教や、乙部町の高齢者から聞き取りした民間信仰などを体系的に分類し、「北海道は宗教の博物館」(佐々木教授)であることを論考している。
佐々木教授が2001年に同出版から出した、松前藩の宗教政策を論究した『アイヌと日本』の続編。先住のアイヌ民族と和人がともに暮らす北海道でどのような宗教が根付き、信仰されてきたかを研究し、非常に多くの宗教や信仰、思想が混在していることを明らかにした。
アイヌ民族については、最上徳内の『蝦夷草子』、新井白石の『蝦夷考』など和人側が著した著作から、多様な生活信仰を紹介。熊をいけにえにした儀式「イヨマンテ」、家族との死別の悲しみを忘却させる法式「イムシトイ」、祈とうや葬送など、独自の世界観を持って行っていた。
和人については、北東北の宗教史との関連から、10世紀には北海道に仏教が伝来していた可能性を指摘。有珠善光寺(伊達市)は9世紀の天台僧円仁(慈覚大師)が開基したという縁起があることなど、その論拠を挙げる。このほか神社神道やキリスト教にも焦点を当てている。
佐々木教授は乙部町史の編集長を務めた経験から、同町内の老人クラブからの聞き取り調査も実施。伝統宗教や新宗教のほか、神社での祭礼や家々で多彩な信仰が息づいていた。屋敷神、共同祈願、巫女(みこ)や祈とう師、妖怪、霊異、憑(つ)きもの、占い、予兆、禁忌、呪術など多彩で、生活の知恵から伝わっている民間療法もあった。
佐々木教授は「民族には独自の文化が根付いている。和人には和人の世界や宗教があり、アイヌ民族にも独自の生活や信仰の姿がある。共存する視点で相対的に生活や信仰を見て、相互理解につなげてもらえれば」と話している。
261ページ、2300円。問い合わせは最寄りの書店へ。
提供 - 函館新聞社
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