犯罪被害者支援 道南でも広がり

 国の犯罪被害者等基本法に基づく、犯罪被害者支援の動きが道南でも広がりつつある。3月には松前町が道南では初の単独条例となる「町犯罪被害者等支援条例」を制定。森町や江差町など渡島、桧山両管内の9町ではいわゆる「生活安全条例」に関連条項を盛り込み、支援を展開している自治体もある。しかし、人口が集中し、犯罪の発生が多い函館や北斗市、七飯町などでは条例が未整備のままだ。

 国は2005年4月、犯罪被害者らの権利や利益保護を目的に同基本法を施行。道も07年3月に「犯罪被害者等支援基本計画」を策定した。松前町の条例では「被害者が平穏な生活を取り戻すまでの間、途切れない支援をする」という基本理念を定め、町や町民、事業者の責務を条例に盛り込んだ。条例未整備の函館市では「条例制定で、具体的にどのような支援策ができるのか、札幌や旭川など他都市の事例も踏まえながら、検討の段階」とする。

 犯罪で傷ついた被害者を行政、民間がそれぞれの立場で支援した事例がある。昨年末に道南のある町で発生した凶悪事件。この町は条例に基づき、被害者のプライバシーや心情に配慮し、町内設置の住宅案内図から氏名を削除したり、公営住宅の優先入居の準備を進めるなど、安心確保に向けた対応を取った。

 また「函館被害者相談室」を運営する民間ボランティア組織「函館家庭生活カウンセラークラブ」(荒木和子会長)の相談員が被害者の求めに応じて、心のケアに当たった。相談員の女性(60)は「直接の面談に赴くのは今回が初めてのケース。事件のつらさは理解できても心の傷を推し量ることができない部分もあった」と話す。現在、公判での付き添い支援の準備を進めているという。

 荒木代表は「我々は民間団体だからこそ、被害者と同じ目線で話ができて、その不安を少しでも和らげることができる。相談室が地域にある意義は大きい」と強調。一方で財政的な支えが乏しく、「すべてをボランティアだけではまかないきれない」とし、相談員自身の精神的負担の増加や質の向上など、活動維持の課題は山積しているという。

 被害者支援は、条例の制定がすべてではないが、警察や弁護士、医師会など各関係機関、民間団体、自治体のそれぞれが連携して的確な役割分担を果たし、被害者の必要とする支援を推進するための大きな根拠となる。犯罪に巻き込まれた被害者を社会で孤立させることのない、支援の輪を社会全体に広げるため、基盤整備が求められる。

update 2009/6/28 10:37
提供 - 函館新聞社


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