クレーンのある風景 目に焼き付ける
旧函館ドック跡地(函館市弁天町)にある函館どつく造船所の大型クレーン(ゴライアスクレーン)は21日午後2時ごろから、撤去・解体される。老朽化で2006年に解体方針が決まっていたが、30年以上、函館港のシンボルとして親しまれてきただけに、多くの市民に惜しまれ、姿を消していく。
赤白の門形をした大型クレーンは旧函館ドックが1975年、30万トンタンカー建造用のクレーンとして2基設置した。しかし造船不況に見舞われ、79年に特定船舶製造業安定事業協会へ売却。その後、別会社を経て04年に市土地開発公社が購入し、今年3月、函館どつくが取得した。
同クレーンは高さ70メートル、幅110メートル、重さ2000トン。懸架能力は1基250トンに及ぶが、売却後は稼動せず、潮風にさらされ腐食が進んだ。さらに93年の北海道南西沖地震で一部破損。同公社の調査で倒壊の危険が高いとの結論に加え、産業遺産としての保存や社会、観光施設の活用が難しいとの判断から撤去・解体の方針は変わらなかった。
同クレーンの撤去準備作業は5月から行われ、工場側にある1号機を海側の2号機に移動し、それぞれの補強作業を完了。21日は起重機船でまず、海側の2号機をつり上げ、隣接する市の土地に運搬する。1号機は25日に撤去する。
撤去開始前日の20日は、多くの市民が見慣れた風景を目に焼きつけた。一時期、保存活動に携わった旧はこだて写真図書館の津田基さん(55)は「撤去を決めた市の説明に対しいまだに不信感がある。経済原理や合理的判断からシンボルを失っていくのは残念でならない」と無念を募らせる。
中央ふ頭で釣りをしていた市内深堀町の男性会社員も「もうすぐなくなると思うとショック。明日も釣りをしながら作業を見守りたい」。亀田港町の男性は「解体は仕方ないと思うが、クレーン船が入港したとき、ため息がたくさん出た」とつぶやく。
函館どつくの社員で、撤去当日、関係機関との連絡調整に当たる南條雅明さん(60)は「複雑な思いはあるが、まずは工事の無事終了を願っている」と、粛々と業務に専念する。
提供 - 函館新聞社
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