創業95年の大正湯 娘が3代目に
創業95年の歴史を持ち、映画「パコダテ人」(2001年)のロケ地としても知られる函館市弥生町の老舗銭湯「大正湯」の3代目店主にこのほど、小武典子さん(60)が就いた。2代目として店を守ってきた父、茂さんが2月に心不全で亡くなり、後を継いだ。生まれも育ちも大正湯という典子さん。近年の銭湯離れで経営は苦しいが、愛着のあるピンク色の建物を前に「何とか維持したい」と意気込んでいる。
大正湯は1914(大正3)年、典子さんの祖父で、船大工だった故、三蔵さんが安定した収入源として古い銭湯を買い取ったのが始まり。27(昭和2)年、現在の特徴的な和洋折衷型建物になった。外観は戦時中、目立たない緑色だったが、終戦を機に明るい色としてピンクに一新した。89年には、函館市の景観形成指定建築物にも選定された。
代替わりは45年。東京の材木屋で働いていた茂さんが帰郷し、親から継いだ。
家庭風呂の少ない戦後復興期、銭湯は庶民の生活に欠かせない社交場だった。北洋漁業が盛んなころは漁師客で男風呂が混雑し、順番待ちも出るほどにぎわったという。
幼い典子さんもよく手伝いに駆り出された。「弟と交代でかごの片付けに大忙し。番頭さんやお手伝いさんもいて、家族を含め10人が働いた時期もあった」と振り返る。
典子さんは市内の高校を卒業後、東京の短大に進学。好きな音楽関係の会社に5年間勤めたが、函館での結婚、出産を経て、79年ごろから店の経営を手伝うようになった。
地元客の減少で西部地区の銭湯は1つ、また1つと灯(ひ)を消している。そうした中でも茂さんは定期的な手直しを怠らず、建物の保存に情熱を傾けていた。倒れる前日まで店番をしていたという。
大正湯を慕い、長年通うなじみ客も少なくない。30代からほぼ毎日訪れている主婦(76)は「風呂はきれいで広くて良い。店のお姉さん(典子さん)もいい人だからいつもここに来る」と話す。
家族の思い出の詰まった番台に座り、典子さんは「あと5年で創業100年。できる限り営業を続け、この建物を残したい」と話している。
営業時間は午後3時―同9時。定休日は月、木曜日。問い合わせはTEL0138・22・8231。
提供 - 函館新聞社
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