函館どつく 大型クレーン6月撤去
函館港のランドマークとして市民に定着した旧函館ドック跡地の大型クレーン(ゴライアスクレーン)2基が、6月下旬に撤去されることが決まった。函館市から今年3月、クレーンごと跡地の一部を購入した函館どつく(函館市弁天町、岡田英雄社長)が、国内最大級の起重機船(クレーン船)を手配し、海上からそのままつり上げて、陸上で解体する。
市が安全性の問題から2006年に解体・撤去の方針を決めて以来、市民団体が保存運動を展開。名残を惜しむ声が広がりそうだ。
同社によると、当初は8月末の撤去、解体を予定していたが、クレーン船の手配がついたため、予定より2カ月早く実施する。施工はクレーンを製造・設置した石川島播磨重工業の関連会社、石川島運搬機械。工期は5月17日から7月7日まで。
クレーンは1基2000トンで、4100トンのつり上げ能力を持つ固定起伏式起重機船「海翔」を手配した。計画では、工場側の1号機を海側の2号機方向に移動し、クレーン全体の補強をして、2号機から撤去する。クレーン船の作業は6月18日からの予定で、つり上げたクレーンは市が保有するドック跡地にそのまま運搬し、脚の部分を下から5分割し、最後にけた部分を下ろして切断する。
撤去費用について同社は明らかにしていないが、市は跡地費用を8億900万円、解体経費を5億2800万円とし、クレーンは瑕疵(かし)物件のため、解体費用を差し引いた2億8100万円を売却価格とした。今後派生するスクラップの売却価格は市の売却価格に上積みされる。同社は「安全、確実な作業を進めたい」と話している。
大型クレーンは1975年の建造で、2004年5月に函館市土地開発公社が北海道振興から跡地23・2ヘクタールとともに買い取った。老朽化や腐食に伴い大地震などで倒壊する恐れがあるとして、市は06年に撤去の方針を決めた。函館どつくもクレーンがある旧4号ドックを購入して活用したい考えがあり、両者で交渉が進められた。
市民団体が大型クレーンの保存・活用を訴え、撤去に反対。ゴライアスクレーンを守る会(石塚與喜雄会長)が署名運動を展開し、市議会にも陳情や要望を重ねたが、撤去の流れは変えられなかった。
石塚会長とともに保存運動に尽力し、守る会を「世界遺産推進連合協議会」に発展させた酪農学園大学教授で北海道産業考古学会の山田大隆会長は「ゴライアスクレーンは函館港の原風景として30年以上にわたり定着した。函館の基幹産業は造船で、造船とともに栄えてきた函館の中では唯一無二の価値がある。造った会社に買い戻されたが、今やどつくの持ち物を離れ、市民の心の中に独自の価値を持ち始めているだけに、残念」と話している。
提供 - 函館新聞社
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