不透明な経営実態発覚…ナルミ破たん 桧山に打撃
【乙部】4月30日に事実上倒産した建設資材商社・ナルミ(本社・乙部町、古畑篤社長)。建設、採石、生コン、健康食品販売などの幅広い事業を手掛けたナルミグループ破たんの衝撃は、景気低迷にあえぐ檜山管内に深刻な打撃を及ぼし始めている。一方で商取引の実態がない融通手形の振り出しなど不透明な経営実態も発覚、破たん原因の真相究明を求める声も上がっている。
ナルミショック―。管内の建設業者は口をそろえる。同社グループが1回目の不渡りを出した3月末以降、江差町を中心に同社グループと関連が深い企業の経営破たんが相次いだ。渡島・檜山両管内では傘下の建設業者など5社が連鎖倒産している。ある建設業者は「完全なショック状態にある。業界では人・物・金の動きが止まった。どの会社が影響を受けたのかお互いに疑心暗鬼の状態にある」と語り、建設業界にも広く浸透した同社グループの影響力を強調した。
同社グループからの工事代金などが未払いとなった、多くの下請業者も経営危機に直面している。ナルミが受注した大型工事に参加したある建設会社は、億単位の工事代金が未払いとなった。発注者から工事代金を手形で受け取った同社は、下請業者への支払いには決済期限の長い自社の手形を充てた。ある下請業者の幹部は「不渡りになることを知りながら手形を振り出したのではないか」と憤りを隠さない。
関係者によると、同社グループと関連企業間では、商取引の実態がない融通手形の運用が恒常化。金融機関やグループ周辺の経営者から手形割引を受けて運転資金をねん出していたという。だが、今年1月以降、同社と密接な関係にある企業で巨額の資金ショートが発生。資金調達が困難になった同社は、傘下にある複数の企業に手形提出を要求し、次々と銀行や金融業者で現金化を繰り返した。手形を振り出した関連会社は、年商を超える億単位の負債を背負い、続々と経営破たんしている。ある関連企業の役員は「手形詐欺にあったようなものだ。数十億円規模もの金がどこに消えたのか」と語気を荒げた。
しかし、4月30日に会見した古畑氏は、多額の現金の行方について「今は話せない」「ノーコメント」と繰り返し、破たんの真相を明らかにすることを拒んだ。融通手形の操作で金融機関などから引き出した現金はどこに消えたのか。金融関係者は「金の行方は全くつかめない。売り上げ低迷や単なる融資の焦げ付きで生じるような負債額ではない。帳簿にも多額の負債は計上しておらず、粉飾決算の疑いが濃厚だ。法的措置も検討しなければならない」と怒りをあらわにした。
国の景気対策などで本年度、管内では公共工事の発注額が大きく伸びる見込みだ。今月から入札手続きなどが始まるが、ある江差町幹部は「連鎖倒産の可能性を含めて業者の審査は要注意だ。管内の業者だけで工事が対応できるのか心配。景気低迷の中で建設業者の淘汰(とうた)は加速するだろう。ナルミショックの影響は計り知れない」と漏らす。
提供 - 函館新聞社
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