原田さん、亡き父の「満州事変記」寄贈
函館市在住の元教員原田幸一さん(68)は、満州に出征した父福治さん(享年31)が家族への思いや戦争体験などを記した手記を冊子「妻と子へ〜命尽きるまで『満州事変記』」にまとめ、市中央図書館(五稜郭町26)に寄贈した。原田さんは「平和への思い、命の大切さを感じ取ってほしい」と話している。
上等兵として1931(昭和6)年の満州事変に出征した福治さんは43年、当時1歳の原田さんと妻の八重子さんを残し、秋田県の病院で病死。病床で、何百枚もの原稿用紙やノートに凄惨な戦争の情景、死から逃れられない病苦、両親への感謝などを克明に記した。
原田さんは小学5年の時に八重子さんから福治さんの原稿用紙などを受け取っていたが、初めて熟読したのは教員を退職してからという。原文を読者が読みやすいように編集した。「親せきや友人など、自分を知る人たちに読んでもらいたく、1年間夢中だった」と振り返る。
病床で激しい戦場の記憶をたどり「町の4分の1は火災を起こして5日間も煙を上げて燃え続け、焼け野原となっていた」、病院で「八重子、お前には本当に気の毒で死んで行かれないようだ。俺はまだ死にたくない。運命だからこれに従うけれど、お前や幸一と別れる辛さは病苦そのものよりも辛い」など、死を前にしてつづった福治さんの文章からは、妻子との別離、凄惨な戦渦の様子が痛ましいほどに伝わる。
原田さんは「語り継ぐ戦争の資料として、父のような人間がいたことを分かってもらえれば」と話す。
A5判の147ページ。100部を印刷し関係者に配布した。同図書館では2部が閲覧できる。
提供 - 函館新聞社
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