「早く法律を」…肝炎患者ら早期成立訴える

ウイルス性肝炎患者の治療体制整備や医療助成などを盛り込んだ「肝炎対策基本法」の制定をめぐり、今国会で審議が行われている。厚生労働省の統計によると、国内のウイルス性肝炎患者は約350万人に上り、大半が輸血や注射の回し打ち、薬害などの医療行為で感染されたとされている。病気が進行すると、肝硬変や肝がんに進行し、患者の多くは死の恐怖や闘病の苦しみを背負いながらの生活を強いられている。道南でも法の成立を望む声が広がっている。

 「いつかこの時が来ると覚悟をしていたが、がんと宣告された時はショックだった」。函館市内の男性公務員(50)は2月、肝がん検診によって肝臓に2センチほどのがんが見つかった。今月中旬、市内の病院に入院し、患部にラジオ波を照射する治療でがんを消滅させたが、ウイルスを根絶させない限り再発の不安はつきまとう。

 男性はB型肝炎訴訟北海道原告団の1人。1990年、血液検査をした際、B型肝炎ウイルスが検出された。子供のころに受けた予防接種が感染源として考えられ、「まさか」という思いだった。キャリアー(ウイルス保有者)であることを職場に伝えたが、誤解や偏見の目で見る人も少なくなかったという。

 2000年ごろまで、ウイルスの増殖を阻止するインターフェロン(IFN)治療を続けた。IFNでの治療中、倦怠(けんたい)感やうつ症状など副作用に苦しんだ。家族を養うために休職せず、副作用に耐えて仕事を続けた。「家では我慢した反動で常にイライラした。妻には嫌な思いをさせて申し訳ない気持ち」と男性は振り返る。

 2006年6月、道内のB型肝炎患者5人が国に損害賠償を求めた最高裁判決で勝訴したのを契機に、全国各地で提訴の動きが広がる。原告団に加わったのは、国の政策に一石を投じたいという思いから。男性は「訴訟の目的はすべてのウイルス性肝炎患者の救済。自分ができることをしたい」と決意を語る。

 一方、同市内の会社役員の男性(55)は91年ごろ、胃の痛みを感じ病院で検査した際、C型肝炎を発症していたことが分った。中学生のころ、十二指腸かいようを患い、輸血治療を受けた。

 一昨年11月、望みを託して12年ぶりに3度目のIFN治療を始め、通院しながら仕事を続ける。「治療をしているのに体を破壊しているみたいだ」と副作用の苦しみを語る。

 道の特定疾患医療制度を適用し、医療費の助成を受けてきたが、給付金が支給されるまで窓口での支払いが生じる。「通院するたびに1万以上かかる。治療費をかせぐために仕事しているようなもの」と漏らす。現在、札幌の肝臓専門医の診療を受ける。役員男性は「地域による治療格差を感じる。どこにいても安心して治療を受けられる体制を築いてほしい」と願う。

 昨年1月、薬害肝炎救済法が成立したが、救済対象者は一握り。北海道肝炎友の会「はまなす会」の川上博史会長(56)は「病気に対する偏見や誤解で家族や仕事を失い、病気で命も奪われた人は計り知れない」と話す。

 道南でも函館市議会や北斗市議会が法の制定を求めた意見書を可決したばかり。川上会長は「国の施策が後退しないよう、よりどころとなる法が必要」と早期成立を訴えている。

update 2009/3/29 11:11
提供 - 函館新聞社


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