市民有志 映画化へ動く…函館出身の作家・故佐藤泰志の代表作「海炭市叙景」

 函館出身の作家、故佐藤泰志(享年41)の代表作「海炭市叙景」を映画化しようと、市民有志が準備を進めている。一昨年刊行された作品集の売れ行きも好調で、昨年11月には函館市内でシンポジウムが開かれるなど、その作品世界が再評価される中、「函館の一筋の光となれば」と映画関係者や読者らが活動を始めた。2月中には正式に実行委員会を発足させる。

 佐藤泰志は「きみの鳥はうたえる」や「そこのみにて光り輝く」など、市井の人の生きざまや青春のきらめきを描き、5回にわたり芥川賞候補となった。1981年の約一年間、函館で暮らした後に再び上京。東京で作家活動を続けていたが90年10月、国分寺にあった自宅近くで自ら命を絶った。

 映画化の構想は、函館の市民映画館「シネマアイリス」の菅原和博代表(52)が近年の邦画界の動きや、函館で撮影された作品などを見る中で、「函館の生活者の視点で映画が作れないか」と考えていた際、「海炭市叙景」を読む機会を得た。「これこそ観たかった映画だ」と直感し、昨年のシンポジウムに足を運んだところ、参加者の熱い思いを知り、活動を本格化させた。

 昨年12月、佐藤泰志の函館西高時代の同期生で、追想集作成などに取り組んできた「はこだてルネサンスの会」事務局長の西堀滋樹さん(58)に構想を提案。2人が中心となって佐藤泰志への思いを共有する仲間を集め、23日に約15人で準備会を立ち上げた。

 準備会で菅原代表は「この作品には地方都市で生きるさまざまな形の『家族』の物語がある。これは今の時代に合致するテーマであり、多くの人に訴える要素となる」と熱っぽく語った。西堀さんも「地元作家の映画化は函館市民でやりたい。映画や文学、世代を超えて映画制作を体験し、フィルムに変化する街並みを刻み、財産としても残したい」と話した。

 関係者によると、監督は第一線で活躍するプロの若手監督が興味を示しているという。プロの俳優に出演してもらい、商業映画としての成功を目指す考え。今後、脚本や資金集めなどを進める計画で、菅原代表は「多くの市民がかかわった形で制作したい。地元作家の作品を地元住民が中心になって企画するのは珍しいのでは」と話している。

 海炭市叙景 函館の街をモデルにした架空の北国の地方都市「海炭市」を舞台に、貧しい暮らしの中で身を寄せ合う兄妹や路面電車の運転士、燃料屋の主人などの人生が交錯する。社会の底辺で、懸命に生きる人たちに目を向けた18の短編連作集で、未完の遺作。この作品が入った「佐藤泰志作品集」(出版・クレイン)は函館市文学館などで購入できる。

update 2009/1/26 11:59
提供 - 函館新聞社


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