この1篇 天国の母に届け…心道嶺美さんが俳壇賞の最終選考まで残る。
函館市松川町の俳人で結社天為に所属する心道嶺美(しんどう・れいみ)さん(52)がこのほど、本阿弥書店(東京)が発刊する総合俳句誌「俳壇」の第23回俳壇賞の最終候補までに残った。心道さんは文学の森(同)が発刊する「俳句界」の俳句界賞でも2005、06年の2度にわたり最終候補に残っていたが、今回は賞にかける思いがこれまでと違った。介護をしていた認知症の母信子さんが直腸がんを患ったためで、「必死で生きようとしている母を見て、自分も頑張ろうと思った」と話す。信子さんは昨年12月末に80歳で亡くなり、年明けに同書店から選考の知らせが届いた。
心道さんは1995年に俳句を始めた。その約5年後に信子さんが認知症を患い、介護をしながら作句に励んだ。プロの登竜門として知られる俳句界賞で2度、最終選考に残ったことで自信をつけたが、07年夏に信子さんが直腸がんの手術を受け、看病が大変なため賞への応募を控えていた。08年夏からは自宅で信子さんの横に付きっ切りの生活。そうした中、「母が生きているうちに、俳句での受賞を知らせたい」と思い、作品を募集していた俳壇賞への応募を決意した。
同賞は30句を1篇とし、今回は全国から342篇の応募があり、30篇が予選通過した。最終選考は俳人の辻桃子さんや宮坂静生さん、俳句を取り入れた舞台を企画するなど、俳句好きで知られる女優の冨士眞奈美さんら計5人が行い、冨士さんが心道さんの作品に特選をつけた。最終選考で特選、秀選に選ばれ、最終候補まで残ったのは17篇だった。
冨士さんは「泣き腫らす瞼(まぶた)に当てゝ缶ビール」を特に気に入り、「約束の聖夜も母のむつき替え」などを高く評価した。むつきはおむつのことで、このほかにも看病を続ける中で詠んだ句がある。
信子さんは12月30日に亡くなった。秋から冬にかけての看病の忙しさもあり、心道さんは応募していたことを忘れていたという。1月中旬、「俳壇」が自宅に届けられ、最終選考に残ったことを知った。「母の生前に間に合わなかったことは残念だが、一生懸命に介護、看病させてもらったことに感謝している」と話す。「時代を超えて愛される句を作り、1周忌までにもう一度応募し、受賞を伝えたい」と遺影に語り掛けていた。
提供 - 函館新聞社
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