競争激化、不況の波 老舗直撃…グルメシティ五稜郭店閉店へ

 道南最大の繁華街、函館市本町の中心にあるダイエーグループの食品スーパー、グルメシティ五稜郭店(本町24)が5月末で閉店することが決定し、波紋が広がっている。前身から数えて約40年の歴史を持つ老舗の撤退は、景気後退に伴う消費低迷の影響が大型店にまで及んでいる実態を浮き彫りにした。関係者には市街地の空洞化や地域全体の地盤沈下を懸念する声が広がり始めた。

 「建物の老朽化に加え、競争激化で売り上げが年々落ち込み、今後も赤字脱却の見通しが立たないと判断した」。1月上旬、同店を経営するダイエーグループの食品スーパー、グルメシティ北海道(市内湯川町3、丸橋淳一社長)は五稜郭店閉店の理由についてこう説明した。

 同店は現在、魚長食品(市内豊川町、柳沢政人社長)が所有する地上7階、地下1階のテナントビルに入居。100円ショップなど計17社のテナントも含め、売り場面積は約8000平方メートルに上り、函館商工会議所が毎月集計している大規模小売店の売上データの対象店舗の一つとなっている。

 同店の年間売上高は1998年の約28億円をピークに減少を続け、2007年2月期には約18億円まで落ち込んだ。同社が昨年12月25日に市経済部へ報告に訪れた際、同社幹部は苦渋の表情で「断腸の思い」と漏らしたという。  同店と地下通路でつながる丸井今井函館店(市内本町32)はライバル店というより共存共栄を図ってきた。金輪浩之店長は「当店としてはこれまでと変わらず、地域のお客さまにご支持いただける店づくりを目指し、町のにぎわいを維持するべく努力したい」とコメントしている。

 本町地区の商店約120社でつくる「五稜郭商店街振興組合」の中里好之専務理事は「数年前の西武百貨店の撤退以来のショック。函館全体の活気が低下しかねない」と危機感を募らせる。近隣に住む女性客(68)も「買い物は丸井とうまく使い分けていたのに。本町周辺は家電や日用品を扱う店が少なくて」と嘆く。

 今回の事態を重く見た行政も動き出した。市と函館商工会議所の代表は21日に同社を訪れ、今後の営業継続を要請。入江洋之・市経済部次長らが「全館とはいかなくても、地域ニーズの高い食品売り場など低層階のみでも営業を続けてほしい」と訴えた。

 市によると、臨席した丸橋社長は「やめたくないのが実情だが、収益が上がらず苦渋の決断だった」と説明。同店に掛かる経費に対し、売り上げの減少が激しいことや、店舗の老朽化、駐車場確保の難しさなどを撤退の要因に挙げたという。

 市内では派遣社員の雇い止めが相次ぐなど雇用環境の悪化も深刻だ。今後、同店の正社員約20人とパート従業員約100人は他店舗への配置転換や再就職のあっせんを検討中というが、今年に入り、ホテルやスーパーの閉館、再編に伴う大量解雇も明らかになり「頭の痛い問題」(市経済部)の一つだ。

 既に市民の関心は「次に何ができるのか」に移っている。同店を含め本町地区の事業主約30社が加盟する「協同組合五稜郭」の久保一夫理事長は「まちづくりの観点で後継テナントの誘致に動かなければ」とし、市も「できれば引き続き商業施設としての店舗運営を望みたい」と話す。

 近年、市内では本州資本のスーパーや家電量販店などが次々と新規出店し、集客競争は激化の一途をたどる一方、商圏の勢力図は大駐車場を完備した郊外に移行しつつある。「ばかでかい空き店舗は街の空洞化を印象付けるだけ」。旧西武の撤退後に一時遊休化が進んだ際、ある商店主が漏らした一言が、あれから5年余の時を経て重くのしかかる。

update 2009/1/26 11:57
提供 - 函館新聞社


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