9月に函館で国際啄木学会

 函館市で今年9月、国際啄木学会(太田登会長)が開かれることが決まった。学会の創立20周年にあたり、石川啄木の原点である函館で節目の大会を開く。芥川賞作家、新井満さんの記念講演や最新の研究発表などが予定されている。太田会長(61)=天理大学名誉教授、日本近代文学=は「一番ゆかりの深い函館の地で記念大会を開催することに意義がある。函館市民に啄木をさらに知ってもらうとともに、国際的な評価を高めたい」と話している。

 同学会は1989年の設立で、会員は国内外に200人以上いる。函館での大会は93年の第4回大会以来で、海外でも台湾や韓国などのほか、2007年にインドネシア、昨年はインドで開いた。今年は9月5―7日の3日間、函館で開催する。

 今大会のテーマは「21世紀に対話する石川啄木(仮題)」で、節目の年に『国際詩人』としての啄木を広く世界に普及させていく契機とする。

 5日はホテル函館ロイヤルで創立20周年記念大会を開催。市民向けのイベントで、新井満さんが啄木の魅力について講演し、同学会発行の書籍や会員の著作物などを廉価で提供するバザーを開く。

 函館の高校生を対象に好きな啄木の短歌を選んでもらったり、自作の短歌を出してもらう企画も検討している。「学会には著名な歌人もいることから、選歌してもらい表彰することなどができれば。広く多くの人に啄木の魅力を伝えたい」と太田会長は語る。

 6日は函館市中央図書館視聴覚ホールで研究発表とシンポジウムを予定。啄木をどう普遍化、継承していくかが求められており、シンポジウムは「21世紀における啄木研究の現在と課題」を仮題にしている。7日は文学散歩で、市内の啄木ゆかりの跡を訪ねる。住んでいた青柳町や大森浜の歌碑、立待岬や一族の墓など、啄木にかかわりの深い風土に親しむ。

 太田会長は「啄木が函館に滞在したのは4カ月余りだが、思想的にも難しい時期。文学を志しながら生活の糧に代用教員を務め、文学者から生活者へのはざまの中でうごめいていた。のちに札幌や小樽、釧路と渡り歩くが、1年間の北海道生活の苦しみがあったからこそ、のちの成長があった。その原点が函館にある」と説明する。

 学会の成功に向け、地元函館で人脈を生かして大会準備を進めている、日本近代文学会会員で啄木研究家の桜井健治さん(61)は「全国から集まる研究者や市民の皆さんが、啄木第二のふるさとで熱い論議を交わし、21世紀に啄木の業績や評価をどうとらえ、検証していくかを探る機会にしたい」と話している。

 石川啄木(いしかわ・たくぼく) 1886年2月、岩手県日戸村(現盛岡市)生まれ。文学を志して1901年、東京へ。07(明治40)年5月、義兄を頼って単身で函館に到着。函館商業会議所臨時雇いを経て函館区立弥生小学校の代用教員となる。8月には代用教員を務めながら函館日日新聞の記者となる。同月25日夜の大火で罹災し、函館を離れて道内を転々とする生活へ。函館滞在は130日余りで、小樽日報や当時の釧路新聞記者を務め、08年に再び上京。森鴎外、正宗白鳥、嶋崎藤村、夏目漱石などを訪ね、10年12月に「一握の砂」を刊行。肺結核を患い、12(明治45)年4月、27歳で没。

update 2009/1/6 13:15
提供 - 函館新聞社


前のページにもどる  ニュースをもっと読む


ご注意:
●掲載している各種情報は、著作権者の権利を侵さないよう配慮の上掲載されるか、又は、各情報提供元の承諾の元に掲載されています。情報の閲覧及び利用については「免責事項」をよくお読み頂いた上で、承諾の上行って下さい。
●掲載中の情報の中には現在有効ではない情報が含まれる場合があります。内容についてはよくご確認下さい。

ページ先頭へ

e-HAKODATE .com
e-HAKODATEは、函館市道南の地域情報や函館地図、旅行観光情報、検索エンジンなど、函館道南のための地域ポータルサイトです