非正規労働者削減、不安募る年の瀬
「雇い止め」や「派遣切り」が社会問題化する中、電子部品製造大手の函館エヌ・デー・ケー(函館市鈴蘭丘町、土谷雅宏社長)が11月末で派遣従業員約150人の契約を打ち切るなど、道南でも雇用情勢の厳しさが顕著になりつつある。政府は雇用対策を検討しているが、国際的な金融不安による景気の悪化などで改善の見通しは立っていない。函館公共職業安定所(ハローワーク函館、函館市新川町)を訪れる元非正規労働者らからは「年内に就職したいが難しい」「派遣の繰り返しは嫌だ」など、生活の不安を訴える声が聞かれる。離職者にとっては厳しい年の瀬だ。
「求人雑誌も薄くなるなど不況を肌で感じる」。函館市在住の高橋祐一さん(30)は11月27日、約1年間派遣社員として働いた函館エヌ・デー・ケーを退職した。半導体の部品をラインに供給する仕事を1日3交代でこなし、妻(23)と5カ月の子を養ってきた。しかし、受注減による生産ラインの縮小に伴い、勤務時間が12時間から7時間に減った。退職理由は「収入減で家族が食べていけない」ため。ほぼ毎日ハローワークに通っている。
以前に神奈川県でトレーラー運転手として働いた経験を生かしたいが、冬道の経験がないため面接で落とされる日が続く。雇用保険の申請をしているが、その先の収入のめどはない。「最悪、パート職でもいいからどうにかしたい」と漏らす。
市内の桜庭和仁さん(33)は「正社員になりたいけれど、結局は派遣しかない…」と肩を落とした。2003年ごろ、1年ほど派遣社員として勤めた会社で、急に解雇を告げられた。その後、愛知県の大手自動車会社で期間従業員となるなど、半年や10カ月単位の仕事を転々とした。
「もう派遣の繰り返しは嫌だ。一生働ける仕事に就きたい」と、実家のある函館で1カ月ほど求職活動を続けているが手応えはない。「国には定額給付金なんかじゃなく、ちゃんと働ける世の中にしてほしい」という。
厚生労働省によると、11月28日現在、「雇い止め」などで職を失った道内の非正規労働者数は308人。同省は10日付で、労働局などに派遣契約の中途解除などに対する指導徹底を求めた。道も同日、本庁と全支庁で労働者向けの特別相談窓口を設置した。
ハローワーク函館では「雇い止め」で社員寮を退去せざるを得なくなった派遣社員らを対象に、住宅確保の支援のための相談窓口を15日に開設。毎日数人が利用している。佐々木聰憲職業相談部長は「11月以降、事業主の都合による離職者が増え、雇用保険の受給手続きも増加傾向」と説明。「昨年から原油高や穀物相場の影響で管内の雇用状況が悪化しており、今後の見通しも不透明だ。今はきめ細かな相談で、職業の紹介、あっせん作業を地道に続けるしかない」と話している。
提供 - 函館新聞社
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