木工の魅力 児童に伝える… 福島の「工作おじさん」熊谷さん
【福島】福島町月崎の元酒屋経営、熊谷正春さん(69)は「工作のおじさん」の愛称で町内の児童に親しまれている。自宅に隣接する作業小屋には、放課後になると「おじさん工作を教えて」と近所の小学生らが集まってくる。のこぎりやハンマー、くぎなどの工具がびっしり並ぶ中、熊谷さんは「カッターの刃は人に向けないこと。相手にけがをさせるから」「金づちは振り回さない。ぶつかれば痛いよ」などと道具の安全な使用方法を説明しながら、子どもたちと楽しい時間を過ごしている。
熊谷さんは1996年3月まで約30年間、町内で酒屋を経営する傍ら、和菓子職人としても活躍した。「昔から子どもたちと一緒にいることが好きだった」という。
「幼いころに父親が木のこまを作ってくれた時の感動が忘れられない。たまらなくうれしかった」と振り返る。それがきっかけで木工細工が趣味になり、その魅力を子どもたちに伝えようと、今年8月に自宅横の庭に作業小屋を自分で建てた。外壁には「ウルトラマン」や「アンパンマン」「崖の上のポニョ」などのアニメがペンキで描かれ、近くの福島小学校の児童が登下校時に見入っている。
熊谷さんと一緒にペンキを塗り、木工玩具づくりに取り組んだ同小2年の中塚陸朗君(8)が学校で友だちに“秘密基地”の存在を伝え、瞬く間に人気となった。放課後になるとランドセル姿の児童が「宿題終わったら遊びに来るから、待ってて」と熊谷さんに声を掛ける。
熊谷さんは初めて作業小屋に遊びに来る子どもにカッターを握らせ、鉛筆削りを体験させる。「刃を前に動かさずに、親指を上手に使って削る」など、道具の正しい使い方を理解してもらうためだ。「多い時で10人ぐらいが小屋に来て、身動きが取れないこともある。一人一人の名前を覚えるのも大変で」と優しく笑う。
12月からはクリスマスリースづくりを始め、一日2、3人が訪れている。10日は同小2年松組の佐々木恋さん(8)、花田瑞紀さん(8)紙谷絵美さん(8)、成田凪さん(7)がリースづくりを楽しんだ。「ここに来て遊ぶのが楽しみ。おじさんが優しいから好き」「おもちゃを作るのが面白い。冬休みの自由研究もおじさんと一緒に作る」と声を弾ませていた。
熊谷さんは「自分でおもちゃをつくることは想像力を生み、刃物を使うことで物を大事に扱う大切さを身に付けることにもなる。元気な子どもたちから自分も元気をもらっている」と話している。
提供 - 函館新聞社
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