函館出身作家・佐藤泰志の世界語る
芥川賞に5回ノミネートされた函館出身の作家、故佐藤泰志(1949―90年)の作品集刊行1周年を記念したイベント「佐藤泰志とその世界」が29日、函館市大森町のサン・リフレ函館で開かれた。東京の出版社「クレイン」の文弘樹代表(46)が作品集出版までの経緯やその後の反響を述べ、「愛憎入り交じる故郷・函館への思いなどに引かれた」などと佐藤文学の魅力を語った。
佐藤は青春の苦悩や市井の人の生きざまを描き、三島由紀夫賞候補にもなった。代表作は「海炭市叙景」など。没後、同級生らが追想集発行などの活動を進めていた。今回は佐藤作品に光を当てようと「はこだてルネサンスの会」(近堂俊行会長)が主催し、市民ら約60人が参加した。
在日韓国人3世の文代表は、ほれ込んだ戦後の在日朝鮮人作家金鶴永の作品集出版後に熱心な読者の反響を受け、「復刊を望まれる作家が他にもいるはずと考えた」と説明。同業者らから名前をよく聞き、古書愛好者間でも話題だった佐藤の追想集を手に入れ、「地元に熱心な読者がいたことに感銘を受けた」と作品集刊行を決意した経緯を振り返った。
佐藤の創作姿勢について「金鶴永と共通し、共に定職に就かず、書くことに人生を懸けた。1冊に込める力も並大抵でなかった」とした。さらに、作品の魅力を「生の与件を受け入れる覚悟があり、今あるここの場で生きるとの強い気持ちがある『核』の部分に打たれた」と語った。
後半、文代表のほか、中学、高校の同級生の陳有崎さん(59)=函館=と浅野元広さん(58)=札幌=、熱心な読者で同世代の番場早苗さん(58)=函館=らがパネリストとなり、佐藤泰志の思い出や作品世界への思いなどをそれぞれ語った。
提供 - 函館新聞社
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