函館出身の作家・佐藤泰志…没後18年 再び注目

 1990年10月、函館出身の作家が41歳の若さで自ら命を絶った。青春の苦悩や市井の人の生きざまを描き、芥川賞候補に5回、三島由紀夫賞の候補にもなった佐藤泰志だ。単行本は絶版となったが、東京の出版社が昨年10月、初の作品集を出した。29日午後2時から、この作品集刊行1周年を記念したイベントが函館市大森町2のサン・リフレ函館で開かれる。彼の死後、中学、高校時代の同級生らは「泰志の文学を残したい」と、追想集を作るなど地道な活動を続けてきた。没後18年、佐藤の世界に再び注目が集まっている。

 佐藤は函館西高で文芸サークルを結成し、小説が2年連続で有島青少年文芸賞優秀賞に選ばれるなど脚光を集める存在だった。東京時代も多くの小説、詩などを執筆。帰郷した32歳の時、「きみの鳥はうたえる」が初の芥川賞候補になった。東京に戻り、4回同賞の候補となりながら受賞は果たせず、90年に自宅近くの林で首をつって死んだ。

 代表作は「海炭市叙景」。同じ街に生きる燃料屋の主人や路面電車の運転手ら、さまざまな人間模様が交差する未完の短編連作集だ。三島由紀夫賞候補作「そこのみにて光輝く」は砂州の街に暮らす若者らの人間関係を描いた青春小説。いずれも舞台の街は函館をモデルとしているほか、函館朝市や青函連絡船についての随筆も残している。

 函館西高の同級生で、東京で同人誌を一緒に手掛けた函館弥生小事務職員の西掘滋樹さん(58)は「高校時代から独立独歩で、学生運動にのめり込む我々を一歩引いた目で見ていた。今思うとペンで生きる覚悟があったのだろう」と振り返り、「いつも気になる存在で死はショックだった。彼の思いを伝えなければと感じた」と語る。

 同じ思いを持つ同級生らが集まり、函館市文学館(同市末広町22)が開館した93年、同館に佐藤の本の表紙絵の原画を飾る活動を展開。99年には関係者の思い出を集めた追想集も作成した。

 作品集は小説8品のほか詩や随筆などが収められ、東京の出版社「クレイン」(文弘樹代表)が出版。29日のイベントは、あまり知られていない地元の文化に光を当てようと活動を続ける「はこだてルネサンスの会」が主催。「佐藤泰志とその世界」と題し、前半はクレインの文代表を迎え、作品集出版までの経緯やその後の反響を語ってもらう。後半は中学、高校の同級生陳有崎さんら5人がパネリストとなり、佐藤との出会いや作品への思いなどを話し合う。参加料は1000円。事前申し込みが必要だが、当日参加も受け付ける。

 西堀さんは「彼の作品の根底には生活者の視点があり、描かれる若者のaオ藤や社会への不満はどの時代にも通じる。彼の世界に触れる良い機会なので多くの人に参加してほしい」と話している。問い合わせ、申し込みは西堀さんTEL0138・32・4052。

update 2008/11/25 10:25
提供 - 函館新聞社


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