建設会社社長、郷土史研究家 社会人が道徳の授業…木古内の小・中学校
【木古内】地域で活躍する社会人が特別非常勤講師として教壇に立ち、実体験や思い出を“教材”に、子どもたちの道徳教育の充実を目指す教育事業が木古内町で始まった。木古内中学校(中村豊校長、生徒145人)には町札苅の岩館建設社長で町議の岩館俊幸さん(62)、木古内小学校(竹内良容校長、児童222人)には郷土史研究家の中村俊一さん(73)が出向き、豊かな社会経験を基に、仕事現場での礼儀の重要さや古里の歴史、発展の様子を伝えている。
地域の特性を生かした教育活動の一環で、道教委が提唱する道徳教育特別非常勤講師配置事業(2002年開始)に即した取り組み。「子どもの心に響く授業の推進を」と、地域の社会人が講師となり、講話や実演、実技指導などで子どもたちの道徳教育を担う。木古内町の野村広章教育長は「専門教科に限らず、近所の大人を先生に迎えることは地域交流の観点からも有意義。子どもたちには広い視野で社会観を養ってもらいたい」と期待する。
4日には岩館さんが「仕事について」と銘打ち、就業体験を控えた2年生55人に講話。「仲間との信頼と協力が重要」と建設現場で培ってきた知識と経験を伝え、「誰でも社会に出てすぐ何もできないのは当然だが、現場ではあいさつと感謝の気持ち、謙虚さを忘れてはならない」と説いた。
さらに、「建設業界は肉体労働だと思われているが、それは違う。三平方の定理を活用したり、定規一つで各種計測を寸分狂わず計算する場面もある。数学や国語、英語などを応用する作業が多く、“頭”を使う。今必死に勉強する理由はそこにある」と締めくくった。
中村さんは町内一帯を見渡す薬師山(標高72メートル)を舞台に授業を企画。12日には4年生44人を引率し、33体ある観音像の由来や美しい景色を案内して歩いた。木古内は古くから水産業が栄えたことに触れ、「海上安全や大漁などの願いを込めて町民がお金を持ち寄って作ったもの。本州の由緒ある寺にある観音さまと同じ姿で、高台からいつもわたしたちを見守ってくれている」と語り掛けた。
児童は「優しい顔と怒った表情の観音さまがいる」「どれも違う表情で不思議だ」などと話し、中には目を閉じて手を合わせる子も。中村さんは子どもたちの様子を優しい表情で見守っていた。
同小4年の細川大意君(9)は「初めて聞く説明ばかりで、見慣れた景色が新鮮に見えた」、清萌香さん(10)は「昔の町民の様子を知ることができ、勉強になった。家族にも教えたい」と目を輝かせていた。
野村教育長は「素直な気持ちで授業を受ける子どもの姿に講師の2人も奮起し、教材研究などにも熱心さが増してきた。たくましく生きてきた人生そのものが、格好の勉強の材料となっている」としている。
提供 - 函館新聞社
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