新谷さん 故郷の味覚を届けて15年、さっぽろ乙部会総会に「三平汁」

 【乙部】札幌に住む乙部町出身者でつくる「さっぽろ乙部会」(渡辺鶴雄会長)の総会では、乙部町花磯の主婦新谷祐子さん(65)がボランティアで、冬の日本海を代表する郷土料理「スケトウダラの三平汁」を15年にわたって振る舞い続けている。身も心も温まる“新谷さんの三平汁”は、懐かしい浜の香りとともに今も変わらぬ故郷のぬくもりを運び続けている。

 札幌市内ののホテルノースシティで8日に開かれた23回目の総会。用意する三平汁は100人分。スケトウは町内の乙部・豊浜両船団から毎年欠かさず贈られる。札幌に住む長女の小田島明美さん(44)と会場入りした新谷さんは、エプロン姿に着替えると早速下ごしらえを始める。「みそをもう少し」「火を弱めて」と、母娘の“あうんの呼吸”で鍋づくりが進む。市内のホテルで調理場を提供してくれるのはここだけ。すっかり顔なじみのスタッフから「久しぶり」「元気だった」と声が掛かる。

 三平汁はみそ仕立てで、長年の勘で味を調えていく。「味が分からなくなるので出来上がるまで食事はお預け」と明美さん。肝臓とともにタラコ(卵)やタチ(精巣)などが引き立てる風味は、ホテルのシェフを「まねができないおいしさ」とうならせたほどだ。大鍋4個分の三平汁は3時間ほどで出来上がった。額の汗をぬぐいながら新谷さんが「みんなに『めぇ、めぇ(おいしい、おいしい)』と言われるのが楽しみでね」と目を細めた。

 三平汁を振る舞うようになったのは1995年から。町役場の若手が総会を盛り上げようと、漁協のイベントや料理番組でも自慢の腕を披露した乙部の“名物母さん”の新谷さんに参加を頼み込んだ。町税務課の萬木譲さん(36)は「三平汁と言ったら新谷のおばちゃん。快く引き受けてもらいました」と振り返る。今ではすっかり総会の名物になった。「三平汁がお目当ての会員も多いはず」と寺島光一郎町長。総会では渡辺会長から新谷さんに長年の奉仕をねぎらう感謝状が贈られた。

 夫を海難事故で失ってからも浜に通い続ける新谷さん。この冬も元気にスケトウ漁の準備を手伝っている。「もう15回にもなるんだね。まだまだ気が若いね」と笑う。「もっと親孝行したいから。ずっと元気でいてね」。会場を駆け回る母の背中を明美さんが優しく見つめていた。

update 2008/11/11 13:44
提供 - 函館新聞社


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