前町長から「天の声」…森町談合初公判
森町発注の町消防防災センター建設工事の指名競争入札をめぐる官製談合事件で、競売入札妨害(談合)の罪に問われた業者側の被告4人の初公判が1日、函館地裁(岡田龍太郎裁判官)で開かれ、工事を落札した準大手ゼネコン東急建設(本社・東京)が町内最大手の星組渡辺土建(星組)と共同企業体(JV)を組んだ背景に、前町長の湊美喜夫被告(79)の「天の声」が働いたことが明らかになった。検察側は、湊被告が2005年9月中旬、東急建設から受注工作を請け負った函館市内の自営業登真人被告(60)に「東急建設を入れるべきではないか」と言われ、星組と東急建設を組ませるよう元建設課長に指示したと指摘、同町の「談合体質」の実態を示した。
検察側は、湊被告の意向が働かなければ入札参加もままならないなど、談合が常態化していたことを明らかにし、起訴した湊被告ら7人の共謀が成立するとした。
冒頭陳述などによると、森町では「公共工事は町内業者に落札させたい」とする湊被告の強い考えがあり、業者選定や入札実施も湊被告の内諾や決裁を経なければならなかったと指摘。町内業者も当時、星組の元社長渡辺英明被告(56)が会長を務めていた町建設協会を中心に談合を繰り返していた。
同センター工事をめぐっては05年6月、町内大手の星組と工藤建設の2社間で話し合い、同センターは星組、町役場庁舎増改築工事(同8月執行)は工藤建設が落札することを取り決め、同7月中旬、渡辺被告が「地元で頑張りたい」と湊被告に申し入れた。湊被告は「あんたと工藤でそれぞれJV組んでやればいい」と話し、地元業者に落札させる意向を示した。
一方、04年秋ごろから「町長の『天の声』があれば工事を落札できる」と考えた東急建設札幌支店の幹部らは、函館市の設備会社元社長の藪下宏一被告(60)から紹介された登被告を介して、同センター工事の受注工作を画策。登被告には同社が工作資金1000万円を用意し、同社が指名業者に入れるよう湊被告に働き掛けた。
一度は、内々で星組に決まりかけていた同センター工事は入札直前になって、登被告や東急建設の活動が活発化。登被告は「5億円規模の工事で星組だけなのはおかしい」「東急建設がメーン(幹事社)にならないか」と湊被告に意向を伝えた。これを受けて、湊被告は元建設課長や渡辺被告らを動かし、JVを組み替えさせ、さらに「東急は大手だべ。したら東急が上だべよ」などと言い、東急建設をメーンにさせた。
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初公判で東急建設札幌支店の元副支店長菅沢利昭(61)、同建築部長川本末男(58)、藪下、渡辺の4被告はいずれも起訴事実を認めた。検察側は「自由競争が阻害され、無駄に投入された税金は多額。町民の信頼を裏切ったという意味でも結果は重大」として、菅沢、川本、渡辺の3被告に懲役1年、藪下被告に懲役10月を求刑し、即日結審した。判決は川本被告が24日、残る3被告が23日に言い渡される。3日には登被告、14日には東急建設の桐井秀行被告(56)の初公判が同地裁で開かれる。
提供 - 函館新聞社
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