聴覚障害者に音・聞かせたい・…手話通訳士・鈴木さん ミュージックサイン広める
バックミュージックや効果音など、「音楽」「音」は映画に欠かせないが、耳が聴こえない・聴こえにくい人(失聴・難聴者)たちは、それを分からないまま鑑賞している。そんな環境を改善し、少しでも多くの情報を伝えようと、函館市に住む手話通訳士、鈴木三千恵さん(48)が中心となり、映画音楽を動作や絵などで表現する「ミュージックサイン」を広めている。全国的にも珍しい試みで、聴覚障害者の世界を広げる手助けとなっている。
「映画のエンドロールに音楽が付いているなんて知らなかった」。3歳で失聴した函館市の藤原弘實さん(67)は、ミュージックサイン付きの映画を観てこう話した。
ミュージックサインは5―7日に3回目を数える「北海道ユニバーサル上映映画祭」(実行委主催)で、上映全作品に取り入れられている。複数の人間が舞台に立ち、挿入歌や音楽を手話や動作などで表現するオリジナルの手法だ。昨年上映した「武士の一分」では、セミの鳴き声をセミの絵を描いた紙をゆらして伝えるなどした。
鈴木さんは「ストーリーと関係なくても、季節を感じたり、イメージを膨らませる材料になる」と説明する。
20代から手話通訳士として活動する鈴木さんは、手話のみの伝達手法にもどかしさを感じていた。歌や演奏が伝えられず、舞台鑑賞でも音が聴こえないために聴覚障害者だけが笑えない状況を目にしてきた。そこで、音のリズム感を動作で表したり、手話の型を破った表現手法を練り出した。
ただ、スクリーンの脇でスポットライトを浴びて行うため、違和感を感じる観客がいたり、意味がうまく伝わらないなど課題も少なくない。見本やルールもないため手探りで作っている。鈴木さんは「聴こえないから、音楽や音の存在を知らないままで良いとは思わない」と力を込める。
鈴木さんは非常勤講師を務める道教育大函館校の学生にもミュージックサインを教えるなど、その輪は少しずつ広がっている。現在は、第3回映画祭で上映する「しゃべれども しゃべれども」の主題歌をどう表現するか、聴覚障害者も交えて検討している。参加している函館市の石井茂憲さん(60)は「ミュージックサインが付くことで、映画を楽しむ幅が広がった」と話す。
鈴木さんは「音が聴こえない人がもう少し幸せな生活を送り、自分の存在を肯定できる手助けになれば」と話している。実行委はミュージックサインの協力者を募集している。問い合わせは事務局TEL0138・31・0010。
提供 - 函館新聞社
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