子供に、大人に愛され43年…太陽模型店8月末で閉店

update 2007/8/5 14:10

 かつて函館一の繁華街としてにぎわった大門地区に創業し、長年営業を続けてきた太陽模型店(東雲町17)が8月いっぱいで閉店する。店主の計良桂子さん(79)が高齢のため引退を決意し、43年の歴史に幕を閉じる。多くの少年たちの心を引きつけ、大人の模型愛好家たちにも親しまれてきた。常連客からは惜しむ声が上がっており、店じまいを前に続々と駆け付けている。

 開店は1964(昭和39)年。4人の子どもを持つ計良さんが養育費の足しにしようと始めた。現店舗は20年ほど前に新築。開店当時、広さは現在の半分ほどで自宅の一部だった。「子どもが模型を作っているのを見て思い立った。自宅で家事や育児をしながら商売できるのも魅力だった」と振り返る。

 2002年に亡くなった夫の嘉宏さん(享年76歳)は当時、会社勤めをしており、手を借りながらも子育ての傍ら一人で店を切り盛りした。初めは手探り状態で商品を仕入れようと、雑誌を見て嘉宏さんが東京のメーカーに直接出向き、卸売業者を紹介してもらった。

 当時の大門地区は子どものが多く、客のほとんどが小中学生。開店の翌年には店内にミニカーを走らせるコースを作って大人気となり、計良さんにとっても思い出深い。店内を埋め尽くした子どもたちはレースに夢中だった。

 時代とともにガンダムのプラモデル、ミニ四駆ブームなど流行も変遷。しかし家庭用テレビゲーム機が発売されると、子どもたちの姿は徐々に店から消えていった。ゲームソフトを扱う時期もあったが、量販店にはかなわないと扱うのをやめた。今は客の9割が大人の愛好家たちだ。

 鉄道模型やラジコン、飛行機や車のプラモデル…。少年のように目を輝かせ、札幌や本州からも愛好家が買い求めに来る。「今や子どもたちの遊びはテレビゲーム。お客さんは少年時代に買えなくて大人になって奥さんに内証で買いに来る人が多いんですよ」と笑みを浮かべる。

 最近は足腰が弱くなり、通院しながら店頭に立つ日々。2、3年前から家族に勧められ、閉店を考えるようになった。「子どもへの責任も果たしたし、元気なうちに趣味を楽しみたい。商売だけでは寂しいでしょう」と計良さん。

 7月28日から在庫処分の半額セールが始まると、知らせを聞きつけ、常連客が連日訪れ「やめないでほしい」などと閉店を惜しんでいる。閉店を知って帰省のついでに10年ぶりに足を運んだ東京在住の会社員菅野有造さん(34)は「小中学生のころ週に1、2回プラモデルを買いに来てお小遣いを使い果たしていた。こういう店がどんどんなくなっていくのは残念」と寂しげな表情を浮かべた。

 計良さんは「43年間はあっという間。親子2代で来てくれたのは何よりうれしかった。閉店を惜しんでくれてありがたい」と感謝。「店を閉めたら途中でやめてしまった水泳をまたやりたい」と第二の人生をおう歌するつもりだ。

提供 - 函館新聞社



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