暖冬の影響あちこちに
update 2007/2/26 14:45
間もなく3月。今冬はこれまで、平均気温が例年より高く、降雪量も平年の約半分。暖冬のまま冬が終わろうとしている。町はすでに春の商戦に入り、大沼のハクチョウも北へ帰り始めている。「暖かく楽だった」との声が多く聞かれるが、暖冬・少雪は良いことばかりではない。この冬の気象状況とさまざまな影響を探った。
◆少雪、ササラ電車出動ゼロ
函館海洋気象台によると、12月1日から2月24日の86日間で、函館の平均気温が平年値を下回ったのは18日間。2月はこれまで真冬日がなく、このまま推移すれば、1931年以降、初めて2月の真冬日がゼロになるという。
この冬(12―2月)の降雪量は157センチ。平年値は309センチで、現在のところ平年の約半分。昨年は大雪で過去最高となる367センチを記録しているだけに、さらに少雪の印象が強い。
雪は降ってもすぐに解けた。函館市内各町会の在宅福祉委員からは「高齢者宅を訪ねるのに足元が良く楽だった」と喜びの声。
市土木部によると、今冬は75台ある除雪車の本格的な出動は1回もないという。また、市交通局によると、レトロな除雪車「ササラ電車」も今冬の出番はゼロ。1937年に除雪車として活躍を開始した以降、一度も出動しないのはこれまでにないという。
だが、除雪の手間が省けたことは、良いことずくめとは言えなかった。函館市シルバー人材センターでは、医療施設や一般家庭から除雪を請け負い、60歳以上の高齢者を派遣しているが、ことしの除雪に関する売り上げは約300万で、昨年の2000万円を大きく下回っている。同センターの早瀬登喜男事業課長は「売り上げ減より、高齢者にとって冬の働き場が減るのは大きな問題」と話す。
ジャンボイエロー金堀店(同市金堀町1)では、除雪用商品の売り上げは昨年の半分以下。山内雅人店長は「暖冬だからといって、逆に売れる商品はない」と苦笑い。店内は22日から自転車コーナーが始まり春を感じさせている。
冬物バーゲンも苦戦した。長崎屋函館店(同市美原1)では、例年は5割引きで売れるような品は、ことしは7割引きで販売したという。店も春の商戦に入った。営業担当の浦田圭造次長によると、同店では冬から春への商品の変わり目となる指標は、タイツとストッキングの売れ具合。「ことしは、例年に比べ2週間ほど春商品の展開が早まった」と話す。
ホクレンショップ昭和店(同市昭和1)では、例年通り鍋物の人気はあったが、冷やし中華など、冷たい麺類がよく売れたという。タラの芽、ウドなどの春の山菜が約1カ月早く店頭に並んでいる。
◆農業・漁業者「春以降不安」
農業・漁業者にとっては、暖冬の影響とこれからの天候に不安が大きい。各地の農家では「ハウス栽培では除雪の手間が省け、暖房費が少なくなった恩恵はあるが、それ以外は畑の土壌など、今後の不安でいっぱい。しばれるときにしばれないのは、春以降どうなるのか心配」と言葉が重い。市銭亀沢漁協(同市古川町13)によると、今のところ、魚種、量ともほぼ例年通り。だが、外崎正専務理事は「暖冬の影響が春、夏に向けてどう出るかが心配」と語る。
大沼国定公園で越冬するハクチョウも、飛来数は例年の約7割ほどの約70―80羽にとどまった。例年は3月上旬に生息地のシベリアに向かうが、ことしはすでに帰り始め、見物に来た人をがっかりさせている。
財団法人日本さくらの会「桜守(さくらもり)」の浅利政俊さんは「暖冬の影響でサクラの開花は早まりそう」と話す。だが「これからの気温の動向が大切。暖かいと害虫発生などの問題もある」と話す。函館植物研究会の宗像和彦会長も「暖冬だったが、ここにきて寒い日もあり、植物は混乱していると思う」と指摘。人間、自然にとって、暖冬は悪影響も大きいようだ。
提供 - 函館新聞社
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