日本海グリーンベルト構想、ドングリの芽吹かず

update 2007/6/17 11:39

 【上ノ国】上ノ国町の日本海グリーンベルト構想―。豊かな日本海を取り戻そうと、荒廃した海岸にカシワの実(ドングリ)を20年間にわたり、町民ぐるみで植え続ける遠大なプロジェクトだ。昨秋初めて3000個のドングリを植えたが、この春に発芽を迎えたのはわずか6個だった。町は自然の厳しさを実感しながらも「希望の6本」に夢を託し、構想実現に向けた改善策を模索している。

 町は昨年10月、町民の協力で集めたドングリ3000個を汐吹地区に植えた。海岸の緑化事業は、風雪や塩害に強い針葉樹の大規模植林が常識だ。しかし、上ノ国町など過疎化が進む日本海沿岸の自治体は財政事情が厳しく、植林事業に巨額の予算を投じる余裕はない。

 町村レベルでも可能な方法を―と考え出したのが、種子そのものが持つ自然力を生かした植生回復。芽が成長しても防風施設は作らないなど、緑化事業の常識を覆す挑戦だ。

 しかし、町を支援する檜山森づくりセンターが、昨年植えたドングリの生育状況を調査した結果、確認された新芽はわずか6本。町は「3000分の6」という厳しい現実を突き付けられた。同センターは(1)ドングリの質が悪い(2)暖冬で雪が少なく土が乾燥して枯死した(3)種そのものが確認できずネズミなどに食べられた―など複数の原因があるとみている。

 報告を受けた工藤昇町長は「6本しかなかったではなく『6本もあった』と考える発想が必要。厳しい自然環境の中で発芽した6本は“希望の芽”。チャレンジには困難は付き物だ。豊かな海を取り戻したいという町民の思いは揺るがない」と力を込める。

 町はドングリを紙製容器などで乾燥やネズミの食害から守るなど、発芽に最適な条件を再検討。同センターもこうした対策で発芽や芽の成長は可能との見方を町に示している。

 工藤町長は「失敗を糧に研究を重ねて最適な方法を編み出したい」と語り、構想に深い理解を示す道の武内良雄水産林務部長(前桧山支庁長)にも意見を求め、日本海沿岸全域に同構想を拡大させたい考えだ。

 調査結果を町ホームページで自ら公表した工藤町長。文末では、日本初の南極越冬隊を指揮した故西堀栄三郎さんの言葉を引用して町民に呼び掛けた。「とにかくやってみなはれ。やる前からあきらめる奴(やつ)は一番つまらん人間だ」

提供 - 函館新聞社



前のページにもどる   ニュースをもっと読む



ご注意:
●掲載している各種情報は、著作権者の権利を侵さないよう配慮の上掲載されるか、又は、各情報提供元の承諾の元に掲載されています。情報の閲覧及び利用については「免責事項」をよくお読み頂いた上で、承諾の上行って下さい。
●掲載中の情報の中には現在有効ではない情報が含まれる場合があります。内容についてはよくご確認下さい。

ページ先頭へ

e-HAKODATE .com
e-HAKODATEは、函館市道南の地域情報や函館地図、旅行観光情報、検索エンジンなど、函館道南のための地域ポータルサイトです