人材育成重視の西尾市政/景気対策とどう両立
update 2007/6/16 11:21
函館市の本年度補正予算案で、西尾正範市長は公約通り、教育や人材育成関連の予算を措置した。乳幼児医療費の助成拡大や保育料の軽減などは見送られ、今後、それらの制度を実現するために年間数億円の財源が必要となりそうだ。一方で、景気対策や産業振興も図る必要があり、ソフトとハードの両面で効果的な事業をどう両立させていくかという課題がある。
特色ある学校づくりに向け、市立学校の校長の裁量で使える「知恵の予算」は5600万円を計上した。医療助成の拡大は来年度からの実施となりそうだが、対象範囲などが決まっていないため、所要経費は未定。市長が掲げるソフト事業は息の長い取り組みとなるが、地域に活力を与える子供を産み、人材を育てていく効果が期待される。
ただ、これらは市の単独事業のため補助金はなく、市の一般財源(市税や交付税など)から毎年賄わなければならない。ソフト事業の負担が増せば、別な分野の事業や経費を削るしかない。西尾市長は市民体育館の移転整備などに反対して当選したため、建設事業費を削ることも考えられる。
しかし、仮に建設事業費を1億円削っても、財源1億円が確保されるわけではない。建設事業費には国や道の補助金、起債なども入っているため、1億円をねん出するためには、その何倍もの事業費を削らなければならない。
建設事業は市民生活の向上のために行う事業だが、地域経済を下支えしている側面もある。本年度は一般会計で105億6000万円だが、昨年度に比べ14・3%、17億6000万円減少した。大型事業を終えたこともあるが、建設事業は削減の流れにあり、さらに先細りとなれば「ソフト事業で人材が育つ前に建設関連業者が倒れてしまう恐れもある」(保守系市議)との声がある。もちろん、企業側にも官依存でない体質の改善などが必要だ。
また、一般会計で1200億円台の予算があれば、数億円を工面することはできそうに見えるが、本年度は既に約30億円の財源不足となっている。それだけ市の財政状況は厳しい。
評価できることは、市の起債発行残高が減ったことだ。2007年度末の起債残高は、全会計で2840億円となる見込みで、西尾市長は06年度末見込みより26億円減らした。今後も地域経済に与える影響を最小限にとどめながら、借金を減らしていく手腕が求められる。
市幹部からは「地元経済の足腰を強くし、行政が何にてこ入れをすればいいか、提案するための知恵が必要」「人材でまちを構築するのが市長の考えなので、函館の地域特性を生かした施策と、新幹線開業などで地域の魅力を高めていくことが大事」などの声が聞かれる。市民生活に不安を与えない範囲で、ソフト・ハード両面の施策を進める必要がありそうだ。
提供 - 函館新聞社
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