12年かけ「恵山町史」刊行

update 2007/6/8 15:02

 函館市と合併するまでの旧恵山町の歩みをつづった「恵山町史」がこのほど、発行された。12年の歳月をかけての刊行で、歴史や文化だけでなく、海洋、火山、花などの自然体系や日本の鉄鋼時代を支えた鉱業について詳述しているのが特徴。編集長を務めた元教諭の近堂俊行さん(71)は「専門性がある中にも、読んで楽しく郷土愛を感じてもらう町史を目指した。恵山を含む下海岸地域が、歴史と文化の彩りが豊かな地であることが伝われば」と話している。

 1970年に発行した「尻岸内町史」に続く町史で、95年から編さん作業を進めてきた。自然、先史、行政、産業、交通・通信、教育、宗教の7編構成に年表を付けた。

 第1編の自然では、恵山を取り巻く海洋環境を学術的に紹介。下海岸地域は暖流と寒流がぶつかり合う特異な地で、古代からコンブ、ナマコ、フカヒレ、アワビなどの海洋資源が豊富で、これらが江戸時代の松前藩を支える経済基盤の一つとなったことを述べている。

 豊富な漁業資源は多くの海鳥や渡り鳥を呼び、それらを狙うクマタカやハヤブサなどの猛禽(もうきん)類も集まる。海流の衝突で発生したガスによる海難も多いが、ガスが標高618メートルの恵山を覆うことで、60種類以上の高山植物が群生することを、徹底した現地調査と学術研究成果から伝えた。

 第4編の産業では、恵山の発展史に欠かせない鉱業にスポットを当てた。江戸時代には砂浜から砂鉄を採集し、冶金技術が発達し、砂鉄は戦後も脚光を浴びた。古武井地区には明治後半から大正前半にかけて採掘された硫黄鉱山があり、一時期は日本の硫黄輸出の半分を占めたという。

 また、近堂さんが1996年から2004年12月の合併まで、恵山町の広報誌に90回執筆した「恵山むかしむかし」の一部も掲載した。明治、大正、昭和の新聞記事から、恵山はツツジや温泉などの観光名所であったことなどを親しみやすい文章で紹介している。

 1483ページのうち1200ページ近くを執筆した近堂さんは「地域住民のほか、旧函館市民の方にも函館と恵山は歴史的に深いつながりがあることを知ってもらいたい」と話している。

 400部を作製し、道南の各自治体や恵山地区の学校や公共施設、市中央図書館などに寄贈。100部を1冊8900円(送料別)で頒布している。問い合わせは市恵山支所地域振興課TEL0138・85・2331。

提供 - 函館新聞社



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