ピンチ 砂浜が消える/海岸線侵食、20b以上後退…
update 2007/4/3 14:28
【上ノ国】砂浜が消えた―。上ノ国町では海岸の浸食で美しい砂浜が消失の危機にある。日本海沿岸の砂浜侵食は、港湾やダム工事などの影響とみられ、海岸の保全対策が課題になっている。激しい浸食にさらされる現場を訪れた。
古代ローマの円形格闘場を思わせる岩のテラスが続く春の海岸。数十センチ間隔に刻まれた段差は、青く澄んだ日本海を眺めるには最適だ。昨秋にはなかったテラスが、こつ然と姿を現した。岩盤がむき出しになった砂浜は、継ぎはぎだらけの痛ましい姿をさらしている。
上ノ国町大崎から木ノ子にかけての約3キロにわたる海岸は、波浪で磨かれた色とりどりの玉砂利が厚くたい積。波打ち際で優美なカーブを描いていた。赤や青の碧玉(ジャスパー)を含む玉砂利は古くから囲炉裏(いろり)の砂として、商家や網元などで珍重された。
「昔の砂浜は国道から緩やかな斜面で何倍も広かった。岩は砂の中から頭を出しているだけだった」。かつて海岸を遊び場にしていた、同町の宮津光則助役が語る。砂利は毎年冬には荒波で削られたが「春になると海流が変わり自然に砂浜がよみがえった」。
だが、年を追うごとに海岸はやせ細り、昔の面影を失っていった。昨秋からは日本海を相次いで台風並みの“爆弾低気圧”が通過。海岸は連日激しい波浪に洗われた。辛うじて波に耐えていた砂浜では、浸食と回復の平衡状態が崩れ、海岸線は一気に20メートル以上も後退した。
変わり果てた海岸の様子に住民は「見る影もなく荒れ果てた。また砂浜は復活するのだろうか。自然のリズムが狂ってきた」と心配顔だ。浸食は海岸沿いを走る国道下の斜面にも及び、路肩の崩壊を防ぐため復旧工事が行われている。
同じ日本海沿岸の石狩浜では、石狩湾新港が建設された1980年代に浸食が始まり、海が荒れた96年には海岸線が15メートル以上も後退。海水浴場の建物が押し流された。専門家は新港建設による海流変化、河川の砂防工事で土砂供給量が減ったことが要因とみる。道が対策工事を行っているが浸食は止まらず、現在も一進一退の攻防が続いている。
提供 - 函館新聞社
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