九死に一生を得たネコ 直売所の「店長」に就任…福島の大久吉田商店

update 2008/8/31 09:49

 【福島】福島町三岳8の水産加工会社「大久吉田商店」(吉田隆悦社長)に隣接する直売所内に、新しく「店長の席」が設けられた。そこで来客を見守るのは雄ネコの吉田天(てん)店長(1歳4カ月)。一時は生命の危機にさらされながらも、吉田社長の家族や従業員の懸命な看病で奇跡的に回復した幸運なネコだ。地域住民の間で「あそこにはすごい店長がいる」「表情や振る舞いがかわいい」と人気を集め、客足も伸び、商売の盛り上げに一役買っている。

 同社の水産加工場で昨年3月下旬、天井裏からネコの鳴き声が聞こえてきた。何日たっても鳴き声はやまず、吉田社長の妻寿子さん(52)や従業員らが心配して探してみると、小さな野良ネコが奥まった穴にはまって動けなくなっていた。

 何とか救出したものの脱水症状がひどく、すぐに函館市内の動物病院へ運んだ。診断では「手遅れかも」と告げられたが、寿子さんらは「何とか助けたい」と帰宅してからミルクや栄養剤をスポイトで少しずつ与え、排尿の世話なども続けた。

 その結果、1週間後には元気を回復。名前は助け出された天井にちなみ「天」と付けられた。温和で人懐こい性格から、家族や従業員らにもかわいがられている。ただ、水産加工場はネコにとって大好物だらけ。食品業は衛生、安全が第一なだけに、商品に手を出さないように、吉田社長は厳しくしつけた。今ではスルメやサケフレークなどを目の前にしても、用意された食事以外は見向きもしない状態になっている。

 愛らしい姿と心和ます雰囲気を買われ、8月1日付の人事異動ならぬネコ異動で、晴れて「直売所の店長」の辞令が出た。ネコが好む高さ70センチの座席で午前9時から午後5時まで、しっかり座り続けて勤務している。給料はマグロのキャットフードという現物支給だ。

 新店長就任が口コミで広がり、夏休み中には多くの小学生が「天ちゃんいますか?」と店に足を運んだ。「あそこに連れてって」と子どもにせがまれ、一緒に来店した保護者が商品を購入するという思わぬ“相乗効果”も生まれている。寿子さんは「子どもにいくら触られたり、なでられても鳴かないし、かんだりもしない。本当にやさしい性格です」と話す。

 出世を越された形となった工場長で、吉田社長の長男、隆寿さん(29)は「やさしいはずなのに、なぜかわたしにだけは“ネコパンチ”をしてくる。『仕事に精を出せ』という激励の意味だと理解しています」と笑顔。天店長は年内無休で、年明けに正月休みを取る予定だ。

提供 - 函館新聞社



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