アウシュビッツの貴重な資料展示…ピオトル・祥子夫人ら企画

update 2008/7/22 11:32

 【知内】第2次世界大戦時にナチス・ドイツ軍が占領地のポーランドにつくった大規模強制収容所「アウシュビッツ(ポーランド名、オシフィエンチム)」の当時の様子を資料で紹介する展示会が22日、知内町重内21の知内町中央公民館で始まる。多くのユダヤ人らが連行され、大量虐殺された歴史的事実とその悲惨さを伝え、後世に恒久平和を訴えるポーランド国立オシフィエンチム博物館所蔵の貴重な資料など約30点が並び、詳しく解説されている。終戦の日(8月15日)を前に、戦争と平和、人類の在り方について問題提起する企画展といえそうだ。8月9日まで。日曜休み。

 ポーランド在住の化学者ピオトル・クルピンスキさん(43)と吉田祥子夫人(木古内町出身)が企画。2人は昨年8月に同博物館を訪れ、復元された毒ガス室や不衛生にさらされた囚人服、人間の髪の毛で編まれたじゅうたんなどを見て回った。祥子さんは「自分の表情が青ざめていくのを感じた」と振り返る。

 今回、一時帰国することが決まり、2人は同博物館で目の当たりにした事実を古里の人にも伝え、平和の尊さを感じてもらおうと資料を集めた。同博物館のテレサ・ズブジェスカ館長に直談判し、全面的協力を得た。

 同博物館内での写真撮影は禁止で、同博物館側から所有する写真のデータが提供され、そのデータを祥子さんがメールに添付し、知内町に住む兄、吉田進さんに送信。2人の意向に賛同した知内町郷土資料館の高橋豊彦学芸員らが送られた写真を使ったパネルづくりに取り組んだ。

 各パネルには解説文を付けた。囚人服については「生地が薄いため冬の寒さをしのぐことは厳しかった」とし、上下水道が不完全だったため洗濯もままならない状況だったことを挙げて、「伝染病が流行し死亡率を高める要因になった」と添えている。

 収容所で最大規模の部屋「第1ガス室」では、「いや応なしにここで亡くなった数え切れないほどの人の運命を考えさせられる」と記している。

 展示作業にも当たったピオトルさんと祥子さんは「わたしたちが幸せであるのは、過去に犠牲を払った多くの人がいたからで、決してそれを忘れてはならない。『二度とこのような悲劇を起こしてはいけない』と、世界のみんなが心に平和を思い浮かべてくれればうれしい」と話す。吉田進さんは「パネルから悲惨な状況が伝わる。直感的に何か心打つものがある」と話している。

 8月11―18日に木古内町中央公民館で展示され、24、25の両日は知内高校文化祭でも展示される予定。学校や公共施設などで同様の展示の希望があれば、積極的に資料を貸し出すという。

 問い合わせは吉田進さんTEL01392・5・7205。

 アウシュビッツ強制収容所 ポーランド南部にナチス・ドイツ軍が設けた。第2次世界大戦中(1940―45年)のナチス・ドイツ軍の人種主義的な抑圧政策に基づき、ヨーロッパでも最大級の強制収容所として、150万人とも400万人を超すともいわれるユダヤ人が虐殺された。1979年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「負の世界遺産」に認定。ポーランド国立オシフィエンチム博物館が、一部現存する施設や資料を公開している。日本国内では福島県内に同博物館所蔵の展示物の一部が並ぶ「アウシュヴィッツ平和博物館」がある。

提供 - 函館新聞社



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