久生十蘭の資料公開…来月15日まで市文学館

update 2008/7/17 19:23

 函館出身の直木賞作家久生十蘭(ひさお・じゅうらん、1902―57年、本名・阿部正雄)の直筆資料が、函館市末広町22の市文学館(和田裕館長)で公開されている。海軍報道班員としてジャワなどに赴いた際に記した「従軍日記」のほか、戦線へ向かう激励で受けた日章旗などが展示されている

 久生は函館市元町で生まれ、28年に上京。29―33年に渡仏し、帰国後に小説家として活動を始めた。43年に戦線に赴き、52年に「鈴木主水」で直木賞を受賞した。直筆資料はことし2月、妻のめいで、著作権継承者である東京在往の三ツ谷洋子さんが寄贈した。和田館長は「上京から80年ぶりに直筆資料として里帰りした」と話す。

 従軍日記では、43年6月に戦闘がないジャワで、朝から飲酒やマージャンでのんびり過ごしていた様子や、同年7月のティモールでは、敵機が上空で旋回している緊迫感、故郷函館への想いがつづられている。中には帰還後に書いた小説に活用した言葉もある。旧日本海軍の公文書を書き写した「第九三四海軍航空隊戦闘詳報」や、取材メモをつづった「NOTEBOOK」は赤裸々な戦地記録として貴重。日章旗には、妻となる三ツ谷幸子、岡本太郎の父の岡本一平、「新青年」編集長の水谷準らの名前が記されている。

 公開に合わせ15日夜、久生の日記帳の活字化、刊行に携わった道教育大函館校の小林真二准教授による講演会「久生十蘭直筆資料公開に寄せて―貴重資料の見どころ解説」が行われた。小林准教授は「日記を編集、加工し小説にしたことが分かり、自身や自己の文学を語らない十蘭の私的側面を知る唯一の資料。戦いの前線では緊迫した様子が伝わり、読み物としても面白い」などと、資料の貴重性を話した。

 公開は8月15日まで。観覧は通常入館料(大人300円、小学―大学生150円)。問い合わせは同館TEL0138・22・9014。

提供 - 函館新聞社



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