支庁再編案可決、格下げ地域 憤り

update 2008/6/29 11:40

 【江差】地域を守りたいという思いはエゴですか―。未明の採決を見守った江差町の職員は、がっくり肩を落とした。支庁が振興局に格下げされる、桧山、日高、根室、留萌の4地域は、支庁改革の意義を認めながらも、身近な視線で農林水産業の振興や地域課題の解決といった機能を引きはがす再編案に反対してきた。しかし、道は対話の姿勢を見せることなく、地域振興をめぐる議論も置き去りにしたまま、支庁存続運動の押さえ込みに動いた。4地域には根強い不信感と重い徒労感だけが残された。

 「支庁の機能と権限は残して欲しいと訴えてきたのに…」。28日未明、江差町と連携してきた日高管内浦河町の担当者が無念の表情を見せた。江差町の担当者も「職員削減は避けられないが、権限や機能まで奪われることは到底納得できない」と憤った。地方における道行政の在り方を問う形で、支庁廃止反対の声は道町村会などを通じて全道に広がった。

 だが、条例成立を目指す道は、地元有力者の切り崩し、町村会の分断、抗議集会参加者への圧力など、押さえ込みに動いた。道町村会長の寺島光一郎乙部町長は「市町村を意のままに操れるという、道の思い上がりは時代遅れだ。市町村と道は対等の関係にある。政策に誤りがある時は“物申す”という姿勢が地方分権時代には必要」とし、高橋はるみ知事の政治姿勢を疑問視する。

 道町村会は、6支庁案を軸とする再編案が昨年11月、何の前触れもなく「9総合振興局案」に様変わりした理由について、道に説明を求めたが「明確な回答は今もない。真相は闇の中だ。検討過程の情報公開が必要」(寺島会長)。採決で反対に回った自民党の石塚正寛道議(留萌市)、松浦宗信道議(根室市)も「9案の説明がない。道は地方への説明責任を果たしていない」と述べ、道の姿勢が造反の要因となったとしている。
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28日未明。道議会が空転する中、4地域の職員が語り合った。江差町など“支庁城下町”には、国の出先機関、企業や金融機関の支店が集中しているが、国の行革や景気低迷のあおりで撤退も相次いでいる。

 江差町では、ある国の出先機関トップが「支庁廃止が撤退の理由となるのは確実だ。うちの役所も時間の問題かもしれない」と語る。官公庁の撤退がさらに進めば、踏みとどまっている企業も“総崩れ”となる恐れがある。

 4地域には、急速な過疎化に伴い、市町の財政難、農漁業の衰退、地域医療の崩壊といった共通課題がある。「少ない職員で財政再建に集中している。地域振興に手が回らないのが実情だ。地域に密着した支援こそ必要な時期だ」と江差町は強調する。濱谷一治江差町長は「さらなる官公庁の撤退を危ぐしている。地域を守る使命感に従って行動してきたが、何が良識なのか分からない」と、言葉少なに道議会を後にした。

提供 - 函館新聞社



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