「もう限界」「廃業するしか…」 イカ漁一斉休漁

update 2008/6/12 12:13

 原油価格の高騰で、道南のイカ釣り漁業者が悲鳴を上げている。全国のイカ釣り漁業者の任意団体「全国いか釣り漁業協議会」(本部・東京)が18、19の両日、小型イカ釣り漁船の一斉休漁を決めたことを受けて、函館市漁協など道内、市内の関係団体も同調した。窮状を訴える目的だが、出口の見えない燃料価格の高騰に漁業者の不安やいらだちは募るばかり。函館、道南特産のスルメイカ(マイカ)漁の厳しい現状を追った。

 「このままでは廃業するしか道はない」。函館港豊川ふ頭の岸壁で出漁を見合わせたイカ釣り漁業の男性(55)が苦虫をかみつぶしたような表情で語る。現在の主漁場となる松前沖までは、1回の出漁でドラム缶3、4本分(600―800リットル)の燃料を消費する。男性は「オイルショックの時でも将来に希望は持てた。今はそれがない。自助努力ももう限界だ」と遠くの海を見つめる。

 道漁業協同組合連合会(道漁連、札幌市)の試算によると、道内の指標となる釧路港ベースの1キロリットル当たりの燃料(A重油)価格は、04年6月に4万4400円だったものが、今年6月には10万3300円となり、5年間で約2・5倍に跳ね上がった。A重油のほか、軽油やガソリンの値上がりも含めると、燃料費アップによる負担増加分は08年の1年間だけで95億円、04年から5年間の累計では約290億円に上るという。さらに漁網や保冷用発泡スチロール箱などの資材価格も上昇を続けており、先行きは不透明なままだ。

 特に集魚灯を使うイカ漁では、ほかの漁に比べて燃料の消費量が多く、経営を圧迫している一方、魚の取引価格は燃料費に比例して上昇していない。道内でイカは04年度に1キロ264円だったものの、07年度には193円まで下落。漁業者からは「出漁すればするほど赤字がかさむ状態で、廃業に追い込まれるのも時間の問題だ」といらだちを隠さない。

 道南では今月1日に解禁となったばかりのスルメイカ漁を直撃。函館市水産物地方卸売市場によると、10日現在水揚げした小型イカ釣り船は計108隻で、前年同期の6割にとどまっている。これに伴い総水揚げ量も前年同期の7割に満たない52・5トンと落ち込んでいる。

 同協議会の休漁決定を受け、函館市漁協(村田純一組合長)も同協議会の方針に従う考え。佐藤博光専務理事は「A重油の価格が100円を超えるのは異常。イカ釣り業の窮状を訴えるという協議会の趣旨に賛同した」と話す。同漁協によると、函館港での小型イカ釣り漁船が燃料や集魚灯の発電に使うA重油価格は5月現在、昨年同月比32・5円増の1リットル102円まで高騰しているという。佐藤専務理事は「道漁連や上部団体とも協力しながら、国に対しても対策を働き掛けたい」としている。

提供 - 函館新聞社



前のページにもどる   ニュースをもっと読む



ご注意:
●掲載している各種情報は、著作権者の権利を侵さないよう配慮の上掲載されるか、又は、各情報提供元の承諾の元に掲載されています。情報の閲覧及び利用については「免責事項」をよくお読み頂いた上で、承諾の上行って下さい。
●掲載中の情報の中には現在有効ではない情報が含まれる場合があります。内容についてはよくご確認下さい。

ページ先頭へ

e-HAKODATE .com
e-HAKODATEは、函館市道南の地域情報や函館地図、旅行観光情報、検索エンジンなど、函館道南のための地域ポータルサイトです