高次脳機能障害作業所でユニット結成、活動1周年…音楽に支えられ再起
update 2008/4/18 12:46
伸びやかな歌声に合わせ、軽快なハーモニカの音色が室内に響く。月に数回、脳外傷友の会「コロポックル」道南支部作業所(函館市大町6)で、ハーモニカの奥井直実さん(41)=通称・nami=と、ギターボーカルの高島啓之副所長(38)の男性ユニット「りぼん」が練習に励む。今春で結成から1年を迎えた。交通事故の後遺症を抱えながらも社会復帰したnamiさんを元気づけたのは音楽。「歯をくいしばり もう一段すてっぷを上がると 目の前に広がるすばらしいランドスケープ…もう地図はいらない」―。オリジナル曲「すてっぷ」の歌詞にリハビリ中の自分を重ね、一段上った先の未来を描き始めた。
同作業所は交通事故や病気などで受けた脳の損傷の後遺症「高次脳機能障害」の当事者が集う交流の場。2007年4月、namiさんはボランティアでやって来た高島さんに出会った。namiさんは函館出身。高校生のころから60年代の英国ロック音楽に影響を受け、札幌の大学に進学、就職後も調理師の傍らバンド活動を続け、ギターボーカルと作詞を担当していた。
しかし05年6月、車を運転中に事故に遭い、1年間に及ぶ入院生活を経て20年ぶりに帰郷。namiさんは「もうここ(函館)で音楽をやることはない」と諦めていた。そんなnamiさんを励まそうと、高島さんは「詞を書いて見せて」と持ち掛け、出来上がった詞に曲を付けて渡した。これをきっかけに「2人で音楽をやろう」と意気投合。高島さんは「今ではすっかり自分が楽しくて、りぼんを通して夢を見ている」と熱っぽく語る。
バンド名は、2人の音楽を通じて「人と人、心と心を結びつける『りぼん』」と、「生まれ変わる」という意味の「reborn」も掛けた。その名の通り人と人のつながりで、各種市民団体や福祉施設の催しに呼ばれるようになり、活動の場は一気に広がった。
「障害が残っていろんなことができなくなり、下を向いていた毎日に、音楽が光を与えてくれた」。2月には就職が決まり、後遺症で以前のようにできなくなったギターもかなり弾けるようになった。「ギターでライブに出る日も近いね」と高島さんに言われ、namiさんは「もう地図はいらない?」とギターを手に笑顔を見せた。
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「りぼん」ライブ予定▽18日午後6時、函館市西部地区の催し「バル街」(実行委主催)に合わせた市地域交流まちづくりセンター(末広町4)のライブ▽5月31日午後8時、函館市港町1のカフェ「バール・デル・クロエ」で開かれるキング・ビスケット・タイム▽6月28日午後2時、旧函館区公会堂(元町11)で開かれる曽山音楽工房主催コンサートに出演予定。
【高次脳機能障害】交通事故や転落事故、脳疾患による脳の損傷で受けた記憶障害、注意障害、行動障害などの後遺症の総称。外見上は回復したように見え、分からないケースも多く、当事者の社会復帰には周囲の理解が求められている。
提供 - 函館新聞社
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