道教育大函館校・佐々木馨教授が「北方伝説の誕生」出版

update 2008/4/13 13:38

 道教育大函館校の佐々木馨教授(61)=日本中世宗教史がこのほど、12冊目の単著となる「北方伝説の誕生〜歴史と民俗の接点」(吉川弘文館)を出版した。史実か伝説かという二者択一の論理ではなく、伝説がどのような背景で誕生し、地域に継承されてきたかを追究、伝説は地域創生の文化力となっていることを論及している。

 1997年に出版した「執権時頼と廻国伝説」(吉川弘文館)で、鎌倉幕府第5代執権の北条時頼の東国行脚伝説が「限りなく史実に近い」と論考し、学会で賛否両論に分かれたため、改めて「伝説とは何か」を探った。

 伝説の基本構図を、正史→歴史的伝説→民話的伝説といった観点から描き、正史の伝説化(歴史的伝説)と民話の史実化(民話的伝説)の世界を示した。9世紀初頭に東国を制した征夷大将軍、坂上田村麻呂の伝説は、東北地方で「武将・田村麻呂」と「人間・田村麻呂」の側面で伝えられてきたことを紹介した。

 アイヌ民族が和人に対して蜂起した「コシャマインの戦い」(15世紀)で、戦地に近い函館市銭亀沢地区に伝わる和人とアイヌの悲恋伝説を例示。「歴史的存在として特定の人物ではないが、和人の渡道という史実を背景に誕生した、民間に伝わる民話的伝説。アイヌ民族と和人による地域開発・創生を象徴する営みで、その伝説が持つ文化力は大きい」と指摘する。

 教育大で「地域文化論」を開講し、学生に伝説のイメージをアンケートしたところ、開講前は「想像上の話」「非現実的な言い伝えやうわさ」と答えた学生が、講義終了後は「地域に生きる本当の話」「地域の文化に影響するもの」などと回答が変わったことも紹介している。

 佐々木教授は「史実か伝説かとしゃくし定規で切れば、北方史は見えない。歴史学と民俗学の接点を見いだすことで新たな世界が開けるのではないか」と話している。

 四六判、226ページ。定価2940円。市内書店などで取り扱っている。

提供 - 函館新聞社



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