函館駅の人間模様そっと見つめる…玉川和子さん笑顔で接客13年

update 2008/4/9 11:07

 「ただ今、八戸行きスーパー白鳥の改札中です」「ご乗車のお客様は7番線乗り場にお急ぎ下さい…」―。アナウンスが響き、観光客や学生らが行き交うJR函館駅。ここで13年間、駅弁販売に励む女性がいる。函館市の玉川和子さん(60)。出会いや別れ、旅立ち、出発…。さまざまな人生の“分岐点”となる場所で、客との触れ合いを大切にしながら弁当を手渡してきた。あす10日は「駅弁の日」。

 「いらっしゃい!駅弁いかがですか」

 駅1階中央の販売店「みかど」。多彩な駅弁が並ぶショーケースを挟み、店内から人一倍明るい声と笑顔を振りまくのが玉川さんだ。

 1995年から同店販売員として勤めている。当時は鉄筋コンクリート2階建ての旧駅舎。建物正面の大時計がシンボルで、「哀愁のある雰囲気」だった。「客や利用者も今より何となくのんびりしていた」と振り返る。

 市内で10年ほど喫茶店を経営した経験を持ち、「友達感覚」の接客が親しまれている。常連客の中には立ち話をしてから買う人も多く、脳梗塞(のうこうそく)で倒れた夫の介護を続ける女性の言葉に涙したことや、台湾人留学生が数年後に再び買いに来てくれたこともあった。「顔なじみの客は買う駅弁の種類もすぐ分かる」と笑う。

 「駅は人間ドラマがある場所」と玉川さん。正月の改札口は帰省した家族連れの楽しげな姿であふれ、今の時期には仲間の万歳三唱に送られて転勤先に向かう会社員の姿がある。「子供が泣きながら離れ離れになる母を見送る姿を見たときは胸が詰まった」。さまざまな人生の節目となる光景が胸に残っている。

 近年は売り上げの伸び悩みなど大変なことも多いが、「弁当売りは楽しい。『また来るよ』の言葉を励みに、これからも頑張りたい」と話している。

 「駅弁の日」は93年、社団法人日本鉄道構内営業中央会(東京)が定めた。

提供 - 函館新聞社



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