「死活問題」業者悲鳴 ガソリン値下げ 客争奪戦

update 2008/4/6 12:12

 暫定税率の期限切れによって実現したガソリンの大幅値下げは、日用品の値上げラッシュに苦しむ消費者にはうれしいニュースとなった。その一方で悲鳴を上げているのがガソリン販売業者。函館市内や近郊でも、3月分の在庫を抱えながら苦渋の決断で値下げに踏み切った業者が続出。利益を度外視した顧客争奪戦に、業界からは「死活問題」との声がある。一方で、再び暫定税率が復活する可能性も高まっており、先の見えない国政の行方は業界全体に不安の影を落としている。

 函館に本社を持ち全道で店舗展開する業者は「暫定税率分が上乗せされている3月分の在庫を長期間抱えないためには値下げはやむを得ない」と1日からの価格改定を断行。それでも思うように売り上げは伸びず、当初は3日間で売り切るとみていた在庫は、丸4日かかってようやく姿を消した。同業者は「ただでさえ石油業界は利ざやが少なく厳しい状態。一日も早く暫定税率の問題が決着しないと、今後の経営の見通しが立たない」と政府の明確な対応を強く訴える。

 札幌に本社を持ち全道展開する業者は、当初は3月分の在庫がなくなってから店舗ごとに値下げする予定だった。しかし、周辺の値下げラッシュで客足が遠のき、1日の午後から価格を改定せざるを得なかった。函館市北部のスタンドが3月分の在庫をすべて売り切ったのは2日の昼ごろ。5日現在、客足はほぼ通常通りに戻り“4月危機”は何とか乗り切ったものの、「5月には暫定税率復活のうわさもあり、今度は4月分の安い在庫をどれだけ確保しているかが値上げのタイミングに影響してくる。4月末には駆け込み需要でガソリンが売り切れになり、本当にパニックになる可能性もあるかもしれない」と不安の種はつきない。

 函館市内を中心に店舗展開する業者も初日から値下げを行ったが、下げ幅は25円ではなく22円。世界的な原油高騰の影響で石油元売り各社は4月から卸値を3円前後引き上げており、「22円」は同店にとってぎりぎりの値下げ額だが、消費者は3円の差に敏感に反応。セルフ給油とスタッフ給油を併設する函館市近郊のスタンドでは「周辺に大手の競合店が多く、客足は現在(5日時点)も通常の半分程度に落ち込んでいる。スタッフ給油を利用するお得意さまの客足が減っていないのが唯一の救い」と話す。

 同スタンドは「我々のような規模の小さな業者はこれ以上値下げするのは難しい状態。政府は今回のガソリン値下げについて『大きな混乱はなかった』とコメントしているが、業者にとっては死活問題であることを認識してほしい」と強く訴えている。

提供 - 函館新聞社



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