井上前市長が名誉棄損で西尾市長提訴

update 2008/3/12 13:25

 昨年4月の函館市長選に絡んだ言動をめぐり、著しく名誉を傷つけられて精神的苦痛を負ったとして、函館市の井上博司前市長(71)は11日、現市長の西尾正範氏(59)個人を相手取り、1100万円の損害賠償と新聞への謝罪広告を求める訴訟を函館地裁に起こした。井上氏は同日、提訴後に代理人の弁護士とともに同市内のホテルで記者会見し、「身の潔白を証明し、汚名を返上したい」と述べた。

 訴状などによると、西尾氏が助役時代の2006年12月19日と辞任後の07年1月29日、市役所内の市政記者クラブで記者会見した際、(1)許可されなかった市街化調整区域への有料老人ホーム建設計画をめぐり、井上氏が建設するよう福祉部に再検討を指示した(2)井上氏が地元情報誌と癒着し、その主宰者とともに市政をゆがめている。また、西尾氏が市長選前の同4月11日の集会で、(3)井上氏を時代劇になぞらえ、何の具体例も挙げず「悪代官」と称して批判した―ことが名誉棄損に当たると主張している。

 選挙から1年近くたつこの時期に提訴に踏み切った理由について、井上氏は「これまで議会や調査特別委などの推移を見てきたが、(再検討の指示について)結論があいまいで白黒が付かなかったため」と説明した。

 市長選については「西尾氏はもともと市長の座を狙っていた。しかし市長と助役なので施策に大きな差がないため、対立候補を引きずり下ろそうと福祉施設問題を取り上げ、自身がクリーンで井上がクロの印象を与えた」と要約した。

 代理人の弁護士は「選挙の怨念(おんねん)を晴らすためではない」と強調。その上で「選挙で架空の事実をでっち上げ、対立候補をおとしめる発言がどこまで許されるのか。民主主義の基本にある言論の自由が、どこまで認められるかが試されている」と訴えた。

 弁護士によると、これまで選挙戦での言論の違法性を主張し、訴訟に発展した事例はないという。

提供 - 函館新聞社



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