伝建指定「大野家所有建物」所有者が高齢化など理由に指定解除の意向/今後も潜在的課題か
update 2008/2/29 11:39
函館市の伝統的建造物(伝建)群保存地区内にある指定建築物「大野家所有建物」(元町31)の所有者が、老朽化や自身の高齢化などを理由に、維持管理の負担が大きいとして、市に解体撤去の方針を伝え、指定解除を求めている。市教委は28日の都市景観審議会(委員15人、会長・韮澤憲吉函館高専教授)で所有者の意向を報告し、保存計画の変更を諮問、委員とともに現地を視察した。市内に76件ある伝建指定物件はいずれも築70―100年を経過し、同様の事態が今後も起き得るだけに、保存の在り方や助成制度の見直しなどが課題として浮上しそうだ。
元町や末広町などにまたがる同保存地区は、市が1988年に都市計画決定し、89年に文化財保護法に基づき、国が地区選定した。76件の建築物と、石垣など25件の環境物が指定されている。
大野家所有建物は21(大正10)年建築の木造2階建て住宅。長く共同住宅として使用されてきた。外壁部分は大幅に改修されているが、屋根の軒蛇腹や持ち送り部分などの一部に、当時の面影を見ることができる。市教委によると、所有者からは2003年に建物や土地を処分したいと最初の相談があり、市は新たな所有者を探すなどしてきた。4年経過後も活用の見通しが立たないため、所有者は今回、3月10日にも解体する意向を示しているという。
この日の審議会で、市教委の田原良信文化財課長は「空き家のままでは老朽化が一層進み、防災や防犯上からも危険。苦渋の決断だが、指定を解除し、建物の除去を許可したい」と報告、所有者の意向に沿う方向で検討していることを明らかにした。委員からは、他の所有者に影響を与える懸念から、今回の事例を契機に、保存のための制度設計を新たに図る必要性あるなどの意見が出された。
次回は3月4日に審議会を開き、指定解除を含めた答申内容や、指定物件の今後の在り方を検討する予定。市教委の須田正晴生涯学習部長は「伝建制度も20年となり、維持補修の補助金なども含め、制度そのものの見直しの時期に来ている」と話している。
提供 - 函館新聞社
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