日豪EPA交渉と道南地域の経済を考えるセミナー
update 2007/3/16 10:12
【七飯】日本とオーストラリア政府間で4月にも交渉入りが予定されている経済連携協定(EPA)について、北海道や道南地域の経済に与える影響を考える「日豪EPA交渉と道南地域の経済を考えるセミナー」(道南地区農業協同組合会、渡島支庁、桧山支庁共催)が15日、七飯町文化センターで開かれた。阿部秀明北海商科大教授を講師に迎え、農畜産物の輸入自由化が農業だけでなく、道南経済に深刻な事態をもたらす危険性を再認識した。
EPAは、特定の国同士が物やサービスの貿易自由化に加え、経済活動全般で交流するための協定。4月23日から行われる日本と豪州との交渉では、農畜産物の関税撤廃、もしくは引き下げが焦点になるとみられている。関税が撤廃されると、日本に比べ経営規模や効率性が格段に高い豪州から価格の安い農畜産物が大量に輸入され、国内農家が大きな打撃を受ける懸念がある。セミナーは、同交渉についての理解を深めるとともに、道内の農業保護への意識を高めてもらおうと企画された。
道南地域の農業関係者を中心に約600人が出席。道農政部による日豪EPA交渉の状況説明の後、阿部教授が「日豪EPA交渉が地域経済にもたらす影響について」をテーマに講演。阿部教授は「EPAにより貿易障壁が撤廃されることで、輸出拡大やビジネスチャンスが生まれることは、日本経済復活にとって大事」と意義を示す一方、「食料自給率が40%しかない日本にとって、豪州から価格の安い農畜産物の輸入が増えれば、国内農家が打撃を受けるのは必至。特に北海道は農業のみならず、経済全体が深刻な影響を受ける」と懸念を表した。
阿部教授は、農産物の関税が撤廃された際のシミュレーションを示しながら「内外価格差の大きい牛肉、乳製品、小麦、砂糖は生産中止に追い込まれ、生産農家は年間4300億円の影響を受ける。農業にかかわる製造業、運送業、サービス業などを含めた影響は1兆円を超え、北海道経済にとっては計り知れない損失となる」と説明。「道民が一丸となって、EPAによるマイナスの影響を最小限に食い止めるよう政府に訴えるとともに、農業改革を進め、安全・安心な農畜産物の供給に努力する必要がある」と締めくくった。(小川俊之)
EPA 協定構成国間で、物やサービスの貿易自由化を行う自由貿易協定(FTA)の要素に加え、経済取引の円滑化、経済制度の調和、サービス、投資、電子商取引など幅広い領域での連携強化と協力の促進を行う協定。日本は現在、シンガポール、マレーシアと締結しており、将来的にはASEAN、日・中・韓、豪州、インド、ニュージーランドの16カ国による東アジアEPAの構築を目指している。
提供 - 函館新聞社
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