宗教が仲良く暮らす街…平和と共存、世界に発信

update 2008/1/1 08:43

 和洋さまざまな宗教建築物が立ち並ぶ函館市の西部地区。特に元町の一角には、ハリストス正教会、カトリック元町教会、聖ヨハネ教会の3教会、そして、仏教寺院の東本願寺函館別院がある。世界では宗教の対立がもたらす争いが絶えない。函館のように、異なる宗派が街の一角に集まり、仲良く共生しているのは珍しいとされる。こうした状況を生かし、「平和と友好」を象徴する場所として、観光資源やまちづくりへの活用を提起する声が上がっている。

 元町で生まれ育った評論家、亀井勝一郎(1907―66年)が「世界中の宗教が私の家を中心に集まっていた」と述懐した文章が、カトリック元町教会の前にある碑文に記されている。 函館大谷短大の福島憲成学長は「キリスト教の歴史から、対立しているロシア正教会とカトリック教会が並んで建つことは普通では考えられない」と述べ、異なる宗派の建築物が一角に集まることの“希少価値”を強調する。

 函館市も宗教施設群に注目している。西尾正範市長はかねてから、外国人の訪問を受けると「函館は世界中の宗教が仲良く暮らすまち」と紹介している。市長は「まちの個性ということで発信していく価値がある。多様な宗教と民族が共存するのが人類のテーマで、これだけの宗教が共存していることは、函館をPRする大きな財産」と語る。

 1853年のペリー来航を経て開国。箱館は59年に国際貿易港して開港した。諸外国の要人も箱館入りし、宣教師たちも布教活動を行った。

 開港の年、初代ロシア領事ゴシケビッチがチャチャ登の通りに領事館付属聖堂を建てた。ハリストス正教会の前身で、火災などを経て1916(大正5)年に現在の聖堂が建てられた。83年に国の重要文化財に指定されている。

 同教会から下って大三坂へと入ると、左手に元町カトリック教会がある。1877年に初代聖堂が建てられたが、その前からフランス人宣教師が仮聖堂を建て布教活動を行っていた。

 1878年には、ハリストス正教会の斜め向かいにイギリス人宣教師がプロテスタント系の函館聖ヨハネ教会を建てた。福島学長は「開国したばかりで、この地域にしか建てる場所がなかったというのが当時の実情」としながらも、「函館が国際的なまちだったことがうかがえる」と指摘する。

 1915(大正4)年には、東本願寺函館別院が再建された。防火のために全国で初めてコンクリートで造られた寺院として知られ、昨年12月には国の重要文化財に指定された。

 この一角から少し離れた所にはアメリカ系、メソジスト系の日本基督教団函館教会もあり、元町に限らず、西部地区には函館八幡宮や護国神社、道教の流れをくむ函館中華会館もある。船見町には浄土宗称名寺や日c」宗実行寺、曹洞宗高龍寺の名刹(めいさつ)が並び、各宗派の中核寺院でもある。「国際観光都市」と言われるゆえんを、宗教建築群からも垣間見ることができる。

 さらに旧函館区公会堂や太刀川家住宅といった国の重要文化財もあり、多彩な建築様式が混在し、異国情緒が漂う観光名所としての価値は高い。

 福島学長や西尾市長が指摘する「函館の財産」として歴史的、文化的な価値を掘り下げ、平和・友好を発信することができれば、国際観光都市としての魅力は一層深まる。

提供 - 函館新聞社



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